2015年05月22日
インバル&都響のブルックナー:交響曲第2番
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今や現代を代表する大指揮者となったインバルの新譜はどれも注目で聴き逃すことができない。
既にマーラーの交響曲を軸として、ショスタコーヴィチなどの交響曲の名演を東京都交響楽団やチェコ・フィルとともに再録音しており、そのいずれもが旧録音を超える圧倒的な名演となっていた。
ブルックナーの交響曲についても、既に第5番及び第8番という最も規模の大きい交響曲と最も優美な第7番、そして比較的マイナーな第6番を東京都交響楽団と再録音している。
いずれもフランクフルト放送交響楽団との演奏を上回る名演であり、インバルが、マーラーとブルックナーの両方の交響曲の演奏を得意とする稀有の指揮者であることを見事に証明していたと言えたところだ。
そして、今般、ブルックナーの交響曲チクルスの第5弾として、満を持して初期の交響曲である交響曲第2番が登場した。
とにかく素晴らしい名演。
これ以上の言葉が思い浮かばないほどの至高の超名演と言えるだろう。
インバルは、第1楽章冒頭の弦楽による繊細な響きからして、かの聖フローリアン教会の自然の中のそよ風のような雰囲気が漂う。
その後も、同曲特有の美しい旋律の数々を格調高く歌い上げていく。
それでいて、線の細さなどはいささかもなく、トゥッティにおいてはブラスセクションをしっかりと響かせるなど強靭な迫力にも不足はなく、骨太の音楽が構築されている。
このあたりの剛柔の的確なバランスは、インバルによるブルックナーの交響曲演奏の真骨頂とも言うべき最大の美質と言えるだろう。
そして、インバルによる本演奏は、朝比奈やヴァントなどが1990年代以降に確立した、今日ではブルックナーの交響曲演奏の規範ともされている、いわゆるインテンポを基調とした演奏には必ずしも固執していない。
第3楽章や第4楽章などにおいても顕著であるが、演奏全体の造型美を損なわない範囲において、若干ではあるが効果的なテンポの振幅を加えており、ある種のドラマティックな要素も盛り込まれていると言えるところだ。
それにもかかわらず、ブルックナーの交響曲らしさをいささかも失っていないというのは、インバルが、同曲の本質を細部に渡って掌握しているからに他ならないと言うべきである。
また、本演奏において特筆すべきは、東京都交響楽団の抜群の力量と言えるだろう。
先般発売されたショスタコーヴィチの交響曲第4番においてもそうであったが、弦楽器の厚みのある響き、そしてブラスセクションの優秀さは、とても日本のオーケストラとは思えないほどの凄味さえ感じさせる。
都響の誇る抜群のアンサンブル精度の高さ、その精度もさることながらブルックナーの重厚な和声構成の魅力が存分に伝わるバランスのよさ。
考え抜かれたフレーズとテンポの抑揚、アクセント、アーティキュレーションへの拘りが細部まで描写され、聴き手の心を掴む。
重厚感を持たせながら、微妙なテンポ捌きで決してだれることなく曲の終わりに向かい突き進むエネルギーは、60分間途切れることなく続き瞬く間に過ぎ去る。
いずれにしても、本盤の演奏は、今や世界にも冠たる名コンビとも言うべきインバル&東京都交響楽団による圧倒的な超名演と高く評価したいと考える。
録音も超優秀で、鮮明にして臨場感溢れる極上の高音質は、本盤の価値をより一層高めることになっているのを忘れてはならない。
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