2015年06月29日

F=ディースカウ&ムーアのシューベルト:歌曲集第4集[SACD]


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フィッシャー=ディースカウが1951年にEMIとレコーディング契約をして以来の伴奏者だったピアニスト、ジェラルド・ムーアとのコラボレーションによるシューベルトの歌曲集。

先般のEMIによる過去の名盤のSACD化シリーズにおいては、若き日のフィッシャー=ディースカウによる一連のシューベルトの歌曲集も採り上げられることになった。

フィッシャー=ディースカウは、紛れもなく独墺系歌曲の最高の歌い手の1人であると言えるが、その最高の名唱とされているのは、何と言っても1970年代にジェラルド・ムーアと組んでスタジオ録音(DG)したシューベルトの3大歌曲集と言えるのではないだろうか。

本盤に収められたシューベルトの歌曲の演奏は、それよりも約20年ほど前の若き日の歌唱ということになるが、モノラル録音という音質面でのハンディはあるものの、1970年代の名唱とは違った意味で、素晴らしい名唱と評価したいと考える。

というのも、フィッシャー=ディースカウの歌唱は、あまりにも巧いために、後年の歌唱においては、その巧さが鼻につくケースも散見されるところであるが、本演奏においては、若さ故の気迫や熱き生命力が全体に漲っており、いささかも技巧臭を感じさせないのが素晴らしいと言えるからだ。

そして、勢い一辺倒の内容のない歌唱には陥っておらず、どこをとっても、シューベルトの音楽の素晴らしさ、美しさを心行くまで堪能させてくれるのが見事である。

巧緻な歌唱を支える若き日のフィッシャー=ディースカウの声は、言葉のニュアンスを深く、美しく伝えて、各曲の伝える世界を克明に描き出している。

本盤に収められた歌曲は、『魔王』や『セレナード』などのシューベルトの歌曲の中でも比較的有名なものを収めているところであるが、これら各歌曲の聴かせどころのツボを心得たいい意味での演出巧者ぶりは、本演奏当時の若き日より健在であると言えるところであり、まさに非の打ちどころのない名唱に仕上がっていると言っても過言ではあるまい。

本盤のピアノ演奏は、いつものジェラルド・ムーアがつとめているが、例によってジェラルド・ムーアによるピアノ演奏は、シューベルトの楽曲に特有の寂寥感に満ち溢れた美しい旋律の数々を情感豊かに描き出しており、フィッシャー=ディースカウによる名唱をより引き立てるのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。

音質は、モノラル録音というハンディもあって、従来CD盤の音質は、いささか鮮明さに欠ける音質であり、時として音が歪んだり、はたまた団子のような音になるという欠点が散見されたところであった。

ところが、今般、ついに待望のSACD化が行われることによって大変驚いた。

従来CD盤とは次元が異なる見違えるような、そして1950年代のモノラル録音とは到底信じられないような鮮明な音質に生まれ変わったと言える。

フィッシャー=ディースカウの息遣いやジェラルド・ムーアのピアノタッチが鮮明に再現されるのは殆ど驚異的であり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。

いずれにしても、フィッシャー=ディースカウ、そしてジェラルド・ムーアによる素晴らしい名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したいと考える。

なお、当たり前のことではあるが、前述の3大歌曲集のSACD化に際して、扱いにくい紙パッケージに封入したことや対訳を省略したユニバーサルに対して、本盤では通常パッケージで、なおかつ対訳が付いていることについても、この場を借りて評価をしておきたい。

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classicalmusic at 00:52コメント(2)トラックバック(0)シューベルト | F=ディースカウ 

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コメント一覧

1. Posted by TG   2015年11月14日 18:39
いつもSACDを誉めていらっしゃることに違和感を感じます。私はオーディオに詳しくはありませんがSACDには懐疑的です。誉めていらっしゃるSACDが従来のCDより音が良いのは多分確かなのでしょうが、それはSACDという規格のせいではなく、(SACDのためかもしれませんが)リマスターが良かったからではないのでしょうか。同じリマスターでCDを制作しても、その違いは分からないのではないでしょうか。ご存知かもしれませんが以下のサイトをご紹介いたします。「楽音に含まれる超高域音を聴き分ける事が出来るか?NHK技研ノートNo.486(抄訳)http://www.nhk.or.jp/strl/publica/labnote/lab486.html」
2. Posted by 和田   2015年12月03日 22:10
いささか懐古的になりますが、ユニバーサルが2010年より、シングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤の発売を開始したのは、ネット配信が隆盛期を迎えパッケージメディアの権威が揺らいでいる中において、快挙とも言える素晴らしい出来事でした。

そしてユニバーサルは発売開始以降、月に3〜5枚のペースで当該SACD&SHM−CD盤を発売してきましたが、小澤によるブラームスの交響曲第2番とブリテンの戦争レクイエムを除いては、かつて発売されていたSACDハイブリッド盤の焼き直しに過ぎなかったと言わざるを得なく、この点がTGさんの疑問だと思います。

しかしながら、ライバルのEMIがフルトヴェングラーの遺産のSACD化に踏み切り、大変な好評を得ていることに触発された面もあるのではないかとも思われますが、先般、これまで1度もSACDで発売されたことがないフルトヴェングラーの一連の歴史的な録音を、定評のあるシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤で発売したというのは、素晴らしい壮挙として大いに歓迎すべきことだったと私は考えます。

そしてその後EMIがアルゲリッチやラトルらの一連の録音のSACD化を相次いで行ったのは、クラシック音楽界における大きな快挙で実に素晴らしいことであったと今でも考えています。

SACD化を行うにあたって選ばれた演奏については首をかしげざるを得ないものも含まれてはいますが、ネット配信によってパッケージメディアの権威が大きく揺らいでいる中でのEMIのこのような果敢なSACD化への取組は、SACDの生みの親でありながら近年では消極的な姿勢に終始しているソニー・クラシカルの体たらくを考えると、高く評価したいと思います。

それも今や昔の話、EMIは解散し、廃盤が相次ぐことになりました。本当に残念なことです。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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