2015年09月09日
ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデンのR.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」「ドン・ファン」
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R.シュトラウスの楽曲というと、筆者としてはどうしてもカラヤンの呪縛から逃れられない。
特に本盤に収められた両曲に関して、カラヤンは何度もスタジオ録音しており、「ツァラ」に関しては先般圧倒的なライヴ録音が発売され、そのいずれもが完成度の高い名演で、聴き手を魅了し続けてきた。
しかしカラヤンの演奏だけが正解ではないはずで、別のアプローチの仕方もあってしかるべきである。
カラヤンとは正反対のオーソドックスなアプローチで、R.シュトラウスの名演を成し遂げたのはケンぺだと考えている。
本盤のブロムシュテット盤も、ベースはケンぺのオーソドックスなアプローチを踏襲するものではないだろうか。
オーケストラも同じシュターツカペレ・ドレスデンで、いぶし銀のような渋いサウンドが、演奏に落ち着きと潤いをもたらすのに大いに貢献している。
作曲家とも縁の深い名門オーケストラによる質実剛健で緻密なサウンドメイクと言えるところであり、このまろやかさと繊細な表情の魅力は、他のオーケストラには求められない。
ブロムシュテットは、1927年アメリカ生まれのスウェーデン人で、ドイツ人でない彼がシュターツカペレ・ドレスデンの音楽監督を10年間(1975〜85年)にわたって務めた事は注目に値する。
菜食主義者として知られ、その贅肉を削ぎ落とした透明感の高いオーケストレーションは彼の人格をそのまま映し出している。
シュターツカペレ・ドレスデンのいともコクのある音響を得て、スケール大きく徹頭徹尾正攻法で展開されたR.シュトラウス演奏であり、ブロムシュテットは、この名門オーケストラの美しさを最大限に発揮させたスケール大きな名演を繰り広げている。
ブロムシュテットの円熟のタクトは、R.シュトラウスを知り尽くしたシュターツカペレ・ドレスデンの重厚緻密な響きを駆使して、巧みに聴く者を高揚へと導く。
解釈も品がよく、大人の風格を感じさせるものであり、流麗で端正、まったく一分の隙もない表現である。
非常にズシリと手ごたえのある、巨匠の風格を持った演奏であり、音色はどちらかと言えば渋い方で、玄人好みと言っても良いだろう。
個人的に筆者がR.シュトラウスのオペラの世界に接する機会が多いためだろうか、およそダイナミズムや尖鋭さを主軸として余りにエネルギッシュに繰り広げられてゆく演奏よりも、当ディスクのごとく、緻密なアンサンブルを聴かせつつ、じっくり味わい尽くさせてくれるような彫りの深い落ち着いた演奏に好感がもてる。
ブロムシュテットの構想はまさに堅実で精緻、あくまで純音楽的な観点からこの作品の普遍的な魅力をさぐりあてている感があり、複雑な対位法の織りなしも十全に描出しきっている。
ただ、いかにもブロムシュテットらしいのは、随所に大仰とも言えるような劇的な表現もしているということで、この点ではカラヤン風の劇的な要素も多分にある。
その意味では、洗練と濃密さが一体となった硬軟併せ持つバランスのとれた美演という表現が適切かもしれない。
流麗な美しさの中に、R.シュトラウスの音楽の本質が立ち現れる薫り高い名演と言えるだろう。
いぶし銀のようなシュターツカペレ・ドレステンのサウンドとケレン味のないブロムシュテットの音楽づくりで醸成されたR.シュトラウスの素晴らしさを是非多くの方に堪能していただきたい。
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