2015年05月26日
ブレンデルのベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集、ピアノ協奏曲全集(旧盤)
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このBOXは、今から30年以上前に録音されたブレンデル旧盤のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集+ピアノ協奏曲全集である。
ピアノ・ソナタ全集は、ブレンデルのきわめて知的なベートーヴェン解釈が、はっきり表面に打ち出されている。
ブレンデルは、納得のゆくまで作品を研究した上で、その曲を自分のレパートリーにする人だが、シューベルトとともに、ベートーヴェンのピアノ・ソナタの分析にもすぐれている。
これは、そうした彼の徹底した研究が実を結んだもので、スタイルとしては、シューベルト的なソフトな性格をもっており、きわめて抒情的でロマンティックである。
ことに弱音の部分に魅力があり、響きの美しさとニュアンスのこまやかさはこの人ならではのものだ。
彼は余分なものを一切付け加えず、あくまで作品そのものに語らせようとしているが、そのための知と情のコントロールも見事だ。
その結果聴かれるのは、端正でバランスに優れ、しかも深い楽譜の読みと端正なテクニックの行使に支えられた説得力あふれる演奏である。
新しい全集に入っている演奏と比べても、ブレンデルの本質は少しも変わっていない。
眼前の楽譜を論理的・分析的に読みとり、それに基づいてベートーヴェンを論理的に構築しようという確信が、彼を支えている。
どの曲の演奏も音楽の呼吸が自然で表情に温もりがあり、しかも明晰である。
演奏全体は穏健であり、誰でも抵抗なく受け入れられる伝統的なベートーヴェン解釈である。
ブレンデルの狙いは、徹底した作品分析をもとに、明快で論理的な演奏を構築し、しかも乾いた演奏との印象を与えないように、ひびきの細やかなニュアンスに留意し、旋律的にも和声的にも、潤いのある抒情的な表現を志向している。
剛ではなく、柔のベートーヴェンが、ブレンデルの描こうとした世界である。
どのソナタの演奏も秀逸で、ピアノ演奏法の研究者として名高いブレンデルの実力が、十全に発揮された演奏だ。
ブレンデルは高度な技術に裏づけられ、曖昧さのない理詰めな音楽性を誇るピアニストである。
とりわけ、ここにきくベートーヴェンのピアノ協奏曲全集が録音された1970年代には、その傾向が顕著であった。
第1番から第5番にかけてのいずれの演奏においても、彼のピアノは大いに雄弁で、必要な音があるべきところにきちんと収まっている。
ベートーヴェンの音楽におけるメタ・フィジカルな要素を追い求めたというより、むしろ、整合性のとれた論理性を追求した演奏内容だ。
指揮者ハイティンクも力のある伴奏をしているが、この後、急速に成熟した彼だけに、80年代、90年代に録音がなされていれば、と思わせる要素も、ここには残されている。
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