2023年03月18日
1996年2月🌁ミュンヘンのガスタイク・フィルハーモニーにおいて🌃3夜にわたって行われたリサイタル👱🏻♀️ムター&オーキスのモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集🎻
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本盤は、ヴァイオリン奏者、アンネ=ゾフィー・ムターとピアニスト、ランバート・オーキスが1996年2月ミュンヘンのガスタイク・フィルハーモニーにおいて、3夜にわたって行われたリサイタルのライヴ・レコーディング盤で、ムター・モーツァルト・プロジェクト最後の1組となったものだ。
ピアノ三重奏曲集は物足りない演奏であったが、協奏曲全集と双璧の充実したソナタ全16曲の演奏。
かつてのベルリン・リサイタル盤のK.304やベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集での過渡的であまりにも作為的なテンポや音色造りは一掃されて、ここでの自然で確信に満ちた演奏は風格さえ漂い、ムターの持ち味である美しい音色とボウイングはもちろん素晴らしい。
ピアノのオーキスもロマン派以降の作品ではピアニストとしての魅力や音色に不満を感じるが、もともとフォルテピアノを得意とする人だけにここでは水を得た魚のようだ。
ムターの場合カラヤン時代とカラヤン以降の時代に分けられるが、本盤に収められた演奏に関しては1人の女性ヴァイオリニストとしての表現力に目覚めたムターの感受性の世界と言えよう。
かつては巨匠カラヤンの指導の下、10代でデビューしたムターは、カラヤン&ベルリン・フィルという土俵の上で懸命な演奏を行っていたところであるが、1989年にカラヤンが鬼籍に入った後の1990年代に入ってからはその素質や個性を大きく開花させ、個性的な演奏の数々を披露するようになったところである。
カラヤンから脱皮して1人のアーティストとしての饒舌な節回しがムターらしさになっており、こんなに心に響くモーツァルトの音はムターならである。
ムターのヴァイオリン演奏は、他の多くの女流ヴァイオリニストのように抒情的な繊細さや優美さで勝負するものではない。
一部の女流ヴァイオリニストによる演奏において聴かれるような線の細さなどはいささかも感じさせることはなく、常に骨太で明朗な音楽の構築に努めているようにも感じられるところだ。
もっとも、かような明朗さを旨とする演奏にはいささか陰影に乏しいと言えなくもないが、当時のムターの年齢を考えるとあまり贅沢は言えないのではないかとも考えられる。
本演奏においても、そうした骨太で明朗な音楽づくりは健在であり、加えて、心を込め抜いた熱きロマンティシズムや変幻自在のテンポの変化、思い切った強弱の付加など、自由奔放とも言うべき個性的な演奏を繰り広げている。
それでいて、お涙頂戴の感傷的な哀嘆調に陥ることは薬にしたくもなく、常に格調の高さをいささかも失うことがないのがムターのヴァイオリン演奏の最良の美質であり、これはムターの類稀なる豊かな音楽性の賜物であると考えられるところだ。
加えて、卓越した技量においても申し分がないところであるが、ムターの場合は巧さを感じさせることがなく、いわゆる技巧臭よりも音楽そのものの美しさのみが際立っているのが素晴らしい。
また、ライヴ録音ということもあって、各楽章の頂点に向けて畳み掛けていくような気迫や切れば血が噴き出てくるような熱い生命力においてもいささかの不足はないところだ。
このようなムターによる卓越したヴァイオリン演奏の引き立て役として、オーキスによるピアノ演奏も理想的であると言えるところであり、いずれにしても本演奏は、ムターによる円熟の個性的なヴァイオリン演奏を味わうことが可能な素晴らしい名演と高く評価したい。
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの録音の中でも、グリュミオー盤、ゴールドベルク盤に次ぐ素晴らしい演奏と言えるだろう。
音質は1996年のライヴ録音ではあるが十分に満足できるものと評価したい。
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