2015年04月26日
フルトヴェングラー&ベルリン・フィルのウェーバー:「魔弾の射手」序曲/ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2番/ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」(1944年ライヴ)[SACD]
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
1944年3月にベルリン国立歌劇場で行われた定期公演のライヴ録音。
フルトヴェングラーの指揮による「魔弾の射手」序曲の録音は5種類あるが、この大戦末期のベルリンでのライヴ盤が傑出している。
死の直前のウィーン・フィルのスタジオ録音よりさらに彫りが深く、実に雰囲気豊かであり、フルトヴェングラーの情感が生々しく迫ってくる。
とりわけ曲の前半はテンポがきわめて遅いが、深閑としてボヘミアの森の暗さをこの上なく雰囲気豊かに描き切っている。
序奏はテンポが遅くておどろおどろしく、スケールも大きく、ホルンのロマンティックな音色が美しく、チェロの表情はつけすぎるくらいだ。
主部もスローテンポを維持し、経過句やコーダのアッチェレランドは抑え気味だが、ひびきの翳が濃く、細部まで刻明に弾き切っているので感銘深い。
1926年盤、1954年盤と並んで後世に遺したい名演と言えよう。
「ダフニスとクロエ」第2番は全奏の音がよく言えば溶け合っているが、実は分離が悪く、濁り気味なので、ラヴェルの音彩を楽しむというわけには到底ゆかず、「夜明け」のみずみずしい詩情など求むべくもない。
ティンパニが意味なく強いのもいただけないし、採るとすれば「無言劇」における木管のソロの巧さであろうか。
フルトヴェングラーの7種の「田園」の中では、このベルリン盤が最も主観的で、フルトヴェングラー色が強い。
フルトヴェングラーの「田園」で最も魅力があるのは第1、2楽章である。
どっしりと重々しく進める第1楽章、対照的に抒情を生かしてこまやかに歌ってゆく第2楽章、ともに楽器のバランスが鮮やかで、この2楽章のゆったりとした表現の美はフルトヴェングラーをおいては見られない。
第1楽章は1952年のウィーン盤によく似ているが、オケのせいもあっていっそう暗く、終結のリタルダンドが大きい。
第2楽章でもテンポの動きが多用されており、第2テーマのあたりのスピード感はほかの盤には見られぬところだ。
以上2つの楽章ではクラリネット奏者の巧さが印象的である。
第3〜5楽章はテンポも速くなって、いよいよ実演色濃厚になり、テンポの変化も多くなるが、そのぶんアンサンブルが雑になり、格調を崩してしまうのも事実だ。
たとえばスケルツォの最後の部分における猛スピード、フィナーレの第2テーマにおけるアッチェレランドなど、いくらなんでもやりすぎではないか。
もしもほかの指揮者がこんなことをしたら、徹底的に叩かれるのは必定だ。
それだけに「嵐」は凄絶だが、ティンパニのアタックは無機的だし、途中でガクンと遅くなるのもおかしい。
フルトヴェングラーならではの「田園」だが、やはり曲自体、これほどまでのドラマを必要としていないのだろう。
音質は、フルトヴェングラーの遺産のSACD化シリーズの中では、音質改善効果が極めて少ないと言えるが、既発売のCDと比較すると、若干は音質の向上効果は見られるところであり、フルトヴェングラーのドラマティックな名演を、不十分ながら、これまでよりは良好な音質で味わうことができることについては一定の評価をしておきたい。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。