2015年04月24日
ティボーのフランス音楽集(サン・サーンス,ラロ,ショーソン)
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ラロのスペイン交響曲(4楽章版)とショーソンの詩曲、サン=サーンスのハバネラ&序奏とロンド・カプリチオーソのカップリングで、ティボーの面目躍如たるレパートリーがぎっしり詰まった1枚。
しかしながら、オーパス蔵の素晴らしい復刻を持ってしても、音質の劣悪さはあまり解消されたとは言えない。
ティボーのヴァイオリンに焦点を絞って録音がなされたこともあって、オーケストラの音質が劣悪であり、序奏とロンド・カプリチオーソにおけるピアノの音も蚊の鳴くような音だ。
しかしながら、これだけで切って捨ててしまっては、本CDの意義が全く見失われてしまう。
本CDで聴くティボーのヴァイオリンは、自在闊達というか草書体というか、ティボー節というべき独特の提琴の歌と響きが堪能できる。
ティボーの絹のような細い官能的な線が魅力的で、何と言う瀟洒な味わいであろうか。
現今のヴァイオリニストでも、個性的な弾き手は数多くいるが、個性に加えて、これだけのフランス風のエスプリ溢れる瀟洒な味わいを音化できる弾き手は、おそらくはティボーだけではないかと考える。
確かに、技量という点からすれば、他にも優れた弾き手はあまたいるが、ティボーの演奏を聴いていると、仰ぎ見るような偉大な芸術を前にして、技量など二の次のように思われてくる。
いずれの曲もティボーの至芸を味わうことが可能であるが、筆者は、特に、スペイン交響曲と詩曲に惹かれた。
スペイン交響曲はエルネスト・アンセルメの指揮するスイス・ロマンド管弦楽団のメリハリのついた伴奏がついている。
ティボーのヴァイオリンに録音の射程を絞っており、ティボーの艶めかしいソロを堪能するにはうってつけで、スペイン交響曲のむせ返るような異国情緒を、これ以上に雰囲気豊かに演奏した例はほかにも見当たらない。
詩曲は、ウジェーヌ・ビゴーの指揮するラムルー管弦楽団との録音であるが、詩曲におけるこれぞフランス音楽ならではの香しい詩情は、ティボーだけにしか出し得ない瀟洒な味わいに満ち溢れている。
絶妙な間の取り方といい、歌いまわしの妙技といい、ポルタメントを駆使してまさに妖艶という言葉がぴったりの演奏である。
ノイズは凄まじいものの、フィリップスから出たものよりは音像がはっきりしている。
サン=サーンスのハバネラは、かつてケン・レコードから出ていたもので、ピエール・モントゥーの指揮するサンフランシスコ交響楽団との共演だが、モントゥーの伴奏は過不足なく、実に巧い。
序奏とロンド・カプリチオーソは、ピアノ伴奏であり、極端にヴァイオリンをクローズアップした録音ではあるものの、ティボーならではの自由自在な弾きっぷりが心地よい。
勿論、前述のようにテクニックや正確さ、楽譜への忠実度のみで音楽を聴く向きには論外なアナクロにしか映らないであろう代物だが、一度はまると媚薬のような弦の悦楽に耽ることができる。
ティボーと言えば、フランス流の洒脱さや気品といった陳腐な文脈で語られることが多い。
実際、そういう面が一番の聴きものである事は否めないが、どうか、歌いまわしの節々に現れる、ヴァイオリンの音色の純度の高さにも耳を傾けてほしいものだ。
音質は、オーパス蔵特有の極端な音質改変(低域あるいは中高域の異常な強調など)もなく、ほぼ音源そのままの音になっているのが好感が持てる。
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