2015年04月25日
ティボー&コルトーのフランク:ヴァイオリン・ソナタ、ショーソン:ピアノと弦楽四重奏のためのコンセール
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ティボーとコルトーの組んだフランクのヴァイオリン・ソナタ、およびショーソンのピアノと弦楽四重奏のためのコンセールは、カぺー四重奏団の録音と並ぶフランス室内楽の代表的録音。
いずれも定評ある歴史的名演であるが、本盤の売りはオーパス蔵によるSP復刻の見事さであろう。
ティボーやコルトーといった歴史的な演奏家の名演奏を、現在望み得る最高の音質で味わうことができるのは何という幸せであろうか。
ティボーの録音はいかにも音が古めかしくて、と敬遠している向きも、とりあえずこの1枚だけは聴いてみて欲しい。
フランクのヴァイオリン・ソナタは、精神性と宗教性を兼ね備えた近代フランスのヴァイオリン・ソナタの中の傑作で、数多くの名録音が残されているが、その録音中最も古くから注目されているのが、このティボーとコルトーの1枚だろう。
ティボーは、ビロードのような音色と個性的な語り口を生かし、甘くエレガントにこの名作を歌い上げている。
時代を感じさせる夢幻的な音だが、曲の内面から語られる詩情の豊かさは凄い。
夢幻性の滲んだ演奏スタイルはもちろん現代の感覚とは遠いが、深いところから音の表面に盛り出てくるものの大きさ、こまやかさ、詩情の豊かさには底知れぬものがある。
それはフランクが期待した以上のものかもしれないが、音楽から真の輝きをもたらしている点で空前絶後である。
それにしても、フランクのヴァイオリン・ソナタにおけるティボーの技巧一辺倒ではなく、瀟洒な味わいの繊細な美しさ。
そのロマンティックでありながらも洗練された表現は、陶酔的な魅力を放っている。
これこそフランスのエスプリと言うべきであり、コルトーの併せ方も素晴らしいという一言に尽きる。
第2楽章、躍動するコルトーのピアノにズシリとした手応えを聴き、やがて優美な3連音の伴奏に乗って歌うティボーの可憐なメロディ(第2主題の後半)を確かめた後、全曲の核心たる第3楽章になると、一瞬、別録音かと思うほど音質がリアルさを増す。
それに何よりも、2人の音楽的なセンスの高貴なまでの美しさには惚れ惚れとさせられてしまうところであり、微妙な移ろいを見せるティボーのヴァイオリンとコルトーの含蓄の深さが光っている。
ティボーにしてもコルトーにしても少年時代にフランクが現存していたことも強みであろう。
フランクはEMIからも出てるがティボーの音色が全然違うので、是非オーパス蔵盤を聴いていただきたい。
SP盤特有のノイズはかなり目立つが、それでもノイズ減で隠れていたヴァイオリンの艶がリアルで素晴らしく、ノイズがどうのこうのといったレベルではなく、本質的にヴァイオリンの響きが違うので驚いた次第である。
しかもこのオーパス蔵盤のほうがティボーの線の細さがより鮮明に捉えられている印象を受けるので尚更良く、聴き慣れた演奏だが、魅力を再認識した。
ショーソンの憂愁な抒情の歌わせ方も味わい深いものであり、現在においてもなお、両曲のベストワンに君臨する超名演と評価したい。
20世紀前半のフランスを代表する名演奏家は単にフランス的な感覚を披露しているのではなく、作品から深い情感と高い昂揚感を引き出しているのである。
まさに“不世出”とはこのような演奏について言える表現である。
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