2015年05月23日

シューリヒト&フランス国立管のブラームス:悲劇的序曲、モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(フェラス)、ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」(1955年ライヴ)


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1955年2月5日 シャンゼリゼ劇場、パリに於けるライヴ録音。

シューリヒトは、颯爽としたインテンポの下、繊細なニュアンスを随所にちりばめるという、言わば渋くて、枯淡の境地を垣間見せるような名演を繰り広げた指揮者だと思っていた。

しかし、それは、録音状態のいい名演が1960年代の晩年に集中していることによるものであり、1950年代半ばにフランスのオーケストラと繰り広げた演奏によって、そのような印象が見事に覆ってしまった。

巨匠シューリヒトの芸風は飄々とか軽やかという言葉で片付けられがちだが、本盤ではどの曲でも実に豪快そのもので、恐ろしく大胆な変化を平気で繰り広げる激しい指揮者だったということが分かる。

先ず、シューリヒトの遺した、これは最高の「エロイカ」だ。

シューリヒトの天才ぶりが随所に綺羅星の如く輝いており、期待通りの気迫充分の名演で、シューリヒトらしく速めのテンポでストレートに推進してゆくが、細部にまで神経が行き届いており、微妙な表情の変化を楽しめるのはこの指揮者ならではの魅力であり、全ての音が生命感に溢れている。

冒頭の2つの和音が実に濃密な音で、いつものシューリヒトならではの颯爽としたインテンポで演奏するかと思いきや、随所においてテンポに絶妙の変化を加え、金管の最強奏による強調があったり、急速なアッチェレランドがかかったりと決して一筋縄ではいかない。

内声部は先の演奏を予告するように意味深な動きをしており、そしてまぶしく輝くようなスフォルツァンドを聴いたときにはもう演奏の虜になっている。

第2楽章は一転、ゆったりとしたテンポで格調高く旋律を歌いあげ、素晴らしい表現力を発揮している。

颯爽たるテンポによる第3楽章を経て、終楽章はロンド形式による変転の激しい各場面を目もくらむような面白さで巧みに描き分けている。

シューリヒトはこの作品を完全に手中に収めた自信に満ちており、シューリヒトの「エロイカ」の中でも最も強い感銘を受け、本当に凄いと思った。

比較的速いテンポ設定で一気呵成に駆け抜けて行く、という側面もあるが、1つ1つの音に生命が吹き込まれ、凡庸に流れて行くところは皆無である。

折り目正しくも、僅かにテンポを揺らしながら、聴く者の脳裏に音符を刻み込んで行く。

ライヴならではの瑕疵も若干見受けられるが、これは名演の代償の類と言えるものであり、この演奏のマイナス要素とは一切なっていない。

やはりシューリヒトは凄い才能の指揮者であり、フランス国立管弦楽団もシューリヒトの指揮に必死に食らい付き、フランスのオケ独特の音色がシューリヒトの芸風とマッチしており、実に魅惑的なサウンドを引き出している。

まさに圧倒的な名演と言っても過言ではないものであり、巨匠シューリヒトならではの至芸を味わえる1枚だと思う。

モーツァルトは、颯爽としたテンポの中で繊細な抒情を垣間見せるなど内容の濃い佳演となっており、フェラスのヴァイオリンも実に美しい。

悲劇的序曲は、あまりにも音の状態がよくなく、コメントは差し控えたい。

本盤のライナーは平林氏が執筆しているが、シューリヒトの過去の演奏との対比を行うなど実に充実した内容となっており、これを読むだけでも本盤は相当な価値があると言えるだろう。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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