2023年03月28日
🍂ブルックナーに深い愛着を持ち続けたチェリビダッケ💞晩年に到達し得た自らの指揮芸術の集大成とも言うべき名盤👨🏻🎨交響曲第4番「ロマンティック」[SACD]🎛️
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チェリビダッケは生前、自作を除いては自らの演奏のCD化(LP化)を一切禁じていた。
表向きは、実演をCD(LP)では表現尽くすことができないというのがその理由であったとされるが、ベルリン・フィルの芸術監督に係るフルトヴェングラーの後継者争いで敗退したカラヤンに対する対抗意識も多分にあったのかもしれない。
それ故に、チェリビダッケの演奏を聴くことは実演以外には不可能になったことから、あまたの海賊盤が跋扈するとともに、その存在の神秘性が高まっていくことになった。
我が国にも来日し、その際の演奏がFMでも放送されたことから、一部に熱烈なチェリビダッケファンを生み出したのも記憶に新しいところであるが、殆どのクラシックファンにとっては縁遠い幻の指揮者的な存在であったと言える。
もっとも、チェリビダッケの没後には、遺族の了解を得て、ミュンヘン・フィル(EMI、来日時の演奏についてはアルトゥスやソニー・クラシカルなど)や、さらにそれ以前のシュトゥットガルト放送交響楽団(DG)などとのライヴ録音が相当点数発売されることになり、一般のクラシック音楽ファンでもチェリビダッケの芸術を味わうことができるようになったところだ。
まさに、幻のベールを没後になって漸く脱いだのである。
チェリビダッケは、カラヤンをはじめ同業者への罵詈雑言を浴びせ続けていたが、これは罵詈雑言の対象となった指揮者のファンならずとも、決して気持ちのいいものではなく、このことが現在におけるチェリビダッケに対する評価が二分されている理由であると言えるのかもしれない。
チェリビダッケは、リハーサルにあたって徹底したチューニングを行ったが、これは、音に対する感覚が人一倍鋭かったということなのであろう。
楽曲のいかなるフレーズであっても、オーケストラが完璧に、そして整然と鳴り切ることを重視していた。
それ故に、それを実現するためには妥協を許さない断固たる姿勢で練習に臨むとともに、かなりの練習時間を要したことから、チェリビダッケについていけないオーケストラが続出したことは想像するに難くない。
そして、そのようなチェリビダッケを全面的に受け入れ、チェリビダッケとしても自分の理想とする音を創出してくれるオーケストラとして、その生涯の最後に辿りついたのがミュンヘン・フィルであったと言える。
チェリビダッケの演奏は、かつてのフルトヴェングラーのように、楽曲の精神的な深みを徹底して追求しようというものではない。
むしろ、音というものの可能性を徹底して突き詰めたものであり、まさに音のドラマ。
これは、チェリビダッケが生涯にわたって嫌い抜いたカラヤンと基本的には変わらないと言える。
ただ、カラヤンにとっては、作り出した音(カラヤンサウンド)はフレーズの一部分に過ぎず、1音1音に拘るのではなく、むしろ流麗なレガートによって楽曲全体が淀みなく流れていくのを重視していたと言えるが、チェリビダッケの場合は、音の1つ1つを徹底して鳴らし切ることによってこそ演奏全体が成り立つとの信念の下、音楽の流れよりは1つ1つの音を徹底して鳴らし切ることに強い拘りを見せた。
もっとも、これではオペラのような長大な楽曲を演奏するのは困難であるし、レパートリーも絞らざるを得ず、そして何よりもテンポが遅くなるのも必然であったと言える。
したがって、チェリビダッケに向いた楽曲とそうでない楽曲があると言えるところであり、ブルックナーの交響曲についても、そうしたことが言えるのではないだろうか。
本演奏は、1989年2月、ウィーン・ムジークフェラインザールでの演奏会をソニー・クラシカルが収録したもので、これまで未発表だった幻のライヴ録音である。
因みにEMIから発売されているこのコンビによる通常CD盤では、本演奏の1年前の1988年のライヴ録音であり、高音質SACD化がなされた本盤こそは、チェリビダッケによるブルックナー「第4」の決定盤と言っても過言ではあるまい。
その極大なスケールに圧倒されるところであり、チェリビダッケだけに可能な個性的な名演と評価し得るのではないかとも思われるところである。
これらのことを総合的に勘案すれば、本盤は、ブルックナーの交響曲に深い愛着を持ち続けたチェリビダッケがその晩年に到達し得た自らの指揮芸術の集大成とも言うべき名盤と評価するのにいささかの躊躇をするものではない。
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コメント一覧
1. Posted by マイスターフォーク 2023年03月31日 02:59

チェリとMPOのクオリティーは素晴らしい媒体です。
2. Posted by 和田大貴 2023年03月31日 07:30
マイスターフォークさん、おはようございます。残響の豊かなムジークフェラインの音響効果を考慮してのテンポ配分と思われ、30分を超える巨大な造形によるフィナーレでは、極遅のコーダで管のコラールを支えるチェリビダッケ独特の弦の刻みに施されたアクセントが未曽有の感動を呼び起こします。結果的には素晴らしい演奏で、これまでEMI盤を普段から愛聴してきたのですが、ソニー・クラシカル盤も、大いに心を揺さぶられました。特に普段はチェビダッケはガスタイク・フィルハーモニーでの録音を聴く機会が多く、ムジークフェラインザールの豊かで華麗な響きにも改めて魅了されました。余すところ無くミュンヘン・フィルのハーモニーが味わえ、ガスタイク・フィルハーモニーのEMI盤とは違った魅力が放たれています。終楽章フィナーレの偉大さは相変わらずで、EMI盤は終演後の拍手がカットされていますが、ソニー・クラシカル盤は拍手が収録されており、終演後直後の静寂から、まばらに拍手が始まり…、聴衆の『何か凄いものを聴いてしまった』という心の代弁がヒシヒシと感じ取れます。