2015年06月18日
カラヤン&ベルリン・フィルのシューベルト:交響曲集
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広範なレパートリーを誇ったカラヤンであるが、カラヤンは必ずしもシューベルトを得意とはしていなかったようである。
カラヤン自身は、シューベルトをむしろ好んでおり、若き頃より理想の演奏を行うべく尽力したようであるが、難渋を繰り返し、特に、交響曲第9番「ザ・グレイト」に関してはフルトヴェングラーに任せるなどとの発言を行ったということもまことしやかに伝えられているところだ。
実際に、レコード芸術誌の「名曲名盤300選」などにおいても、シューベルトの交響曲第8番「未完成」や交響曲第9番「ザ・グレイト」の名演として、カラヤン盤を掲げた著名な音楽評論家が皆無であるというのも、いかにカラヤンのシューベルトの評価が芳しいものでないかがよく理解できるところだ。
しかしながら、それほどまでにカラヤンのシューベルトの演奏は出来が悪いと言えるのであろうか。
本盤に収められているのは、カラヤンによる唯一のシューベルトの交響曲全集からセレクトされた2枚組である。
そして、カラヤンはシューベルトをその後一度も録音しなかった。
したがって、本演奏は、いずれもカラヤンによるこれらの交響曲の究極の演奏と言っても過言ではあるまい。
そしてその演奏内容は、他の指揮者による名演とは一味もふた味も異なる演奏に仕上がっている。
円熟のきわみにあった帝王とベルリン・フィルの名コンビぶりは、若書きの交響曲から、ゴージャスなサウンドを引き出して、比類のない魅力を引き出すことに成功。
ともに、3回ずつ、セッション録音を残している《未完成》と《ザ・グレイト》は、当ディスク所収の演奏が3回目のものであり、すみずみまでカラヤンの美学に貫かれているのが特徴だ。
本演奏に存在しているのは、徹頭徹尾、流麗なレガートが施されたいわゆるカラヤンサウンドに彩られた絶対美の世界であると言えるだろう。
シューベルトの交響曲は、音符の数が極めて少ないだけに、特にこのようないわゆるカラヤンサウンドが際立つことになると言えるのかもしれない。
したがって、シューベルトらしさといった観点からすれば、その範疇からは大きく外れた演奏とは言えるが、同曲が持つ音楽の美しさを極限にまで表現し得たという意味においては、全盛期のカラヤンだけに可能な名演と言えるのではないかと考えられる。
また、シューベルトの心眼に鋭く切り込んでいくような奥の深さとは無縁の演奏ではあると言えるが、これだけの究極の美を表現してくれたカラヤンの演奏に対しては文句は言えまい。
なお、カラヤンは当録音の以前にもシューベルトの楽曲を録音しているが、本演奏のような美の世界への追求の徹底度がやや弱いきらいがあり、筆者としては本演奏の方をより上位に掲げたい(カラヤンを好まない聴き手には、他の録音の方がより好ましい演奏に聴こえることも十分に考えられるところである)。
いずれにしても、本演奏は、全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルが醸成した究極の美の世界、そしてカラヤン流の美学が具現化された究極の絶対美の世界を堪能することが可能な極上の美を誇る名演と高く評価したい。
併録の劇音楽「ロザムンデ」序曲も、カラヤンの美学に貫かれた素晴らしい名演だ。
音質は、従来CD盤でも比較的満足できる音質であったと言える。
数年前にリマスタリングも施されたことによって、音質は更に鮮明になるとともに音場が幅広くなったように感じられるところであり、筆者も当該リマスタリングCD盤を愛聴している。
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