2015年05月30日

カラヤン&ベルリン・フィルのブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(EMI盤)


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史上最高のレコーディング・アーティストであったカラヤンによる最後の演奏・録音となった楽曲はブルックナーの交響曲第7番で、ウィーン・フィルとの演奏(1989年)である。

言うまでもなく、さすがにそこまで断定的な言い方をしなくとも、大方の音楽ファンは、カラヤンによるブルックナーの最高の名演と言えば、最後の録音でもある「第7」を掲げるのではないだろうか。

ただ、それは、通説となっているカラヤンの個性が発揮された演奏ではなく、むしろ、カラヤンの自我が影を潜め、只管音楽そのものに奉仕しようという、音楽そのものの素晴らしさ、魅力を自然体で語らせるような趣きの演奏に仕上がっており、もちろん、筆者としても、至高の超名演と高く評価をしているが、全盛期のカラヤンの演奏とはおよそかけ離れたものとも言えるところだ。

もっともカラヤンの個性が明確にあらわれているのは、カラヤン&ベルリン・フィルが蜜月時代にあり、しかも全盛期にあった1970年代の録音になる。

カラヤンによるブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」の録音としては次に掲げる2種が存在している。

最初のものは1971年度レコード・アカデミー賞を受賞した本盤のベルリン・フィルとの演奏(1970年)(EMI)、次いで、その後、カラヤンによる唯一のブルックナーの交響曲全集に発展していくことになるベルリン・フィルとの演奏(1975年)(DG)である。

いずれもカラヤンが心技共に円熟した時期の録音で、全体がきりりと引き締まっている。

カラヤンは、ベルリン・フィルの持てる力と特質とを充分に発揮させ、いわゆる泥臭さのない明朗な音で、都会的とも言える新しい感覚をもってブルックナーを再現している。

カラヤン&ベルリン・フィルの演奏は、オルガンのような重量感はあっても少しも重苦しくなく、フィナーレにそれがよく示されている。

ベルリン・フィルの技術はさすがに高度なものだし、アンサンブルも緻密で、精緻な美しさを存分味わうことができる。

カラヤンもオーケストラも、脂の乗り切っていることを示す力演なのである。

とはいえこの2種の録音が5年しか離れていないにしては、この両者の演奏の装いは大きく異なっている。

EMIとDGというレコード会社の違い、ダーレムのイエスキリスト教会とベルリン・フィルハーモニーホールという会場の違いもあるが、それだけでこれだけの違いが生じるというのはおよそ信じ難いところだ。

いずれも実に感覚的に磨かれた壮麗なブルックナーであるが、カラヤン的な個性、カラヤン&ベルリン・フィルの全盛期ならではの演奏の豪快さ、華麗さといった点においては、1975年のDG盤の方にその特色があらわれていると言えるだろう。

1975年盤は、旋律は冒頭から極めて明快に力強く歌っているが、アーティキュレーションにカラヤンの個性が濃厚に示されているのが興味深い。

これに対して、本盤(1970年)の演奏は、むしろ、この時期のカラヤンとしては極力自己主張を抑制し、イエスキリスト教会の残響を巧みに生かした荘重な演奏を心がけているとさえ言えるところであり、カラヤンのブルックナーのなかでは好ましい演奏と言えよう。

その意味では、至高の超名演である「第7」(1989年)に繋がる要素も存在していると言ってもいいのかもしれない。

流麗なレガート、ここぞという時のブラスセクションの迫力などは、いかにも全盛期のカラヤン、そしてベルリン・フィルならではのものであるが、それがいささかも外面的なものとならず、常に内容豊かで、音楽の有する根源的な迫力をあますことなく表現し尽くしているのが素晴らしいと言える。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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