2015年08月25日

アバド&シカゴ響のマーラー:交響曲第1番「巨人」


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これは素晴らしい名演だ。

マーラーの交響曲第1番には、ワルター&コロンビア交響楽団(1961年)、バーンスタイン&コンセルトへボウ・アムステルダム(1987年)、テンシュテット&シカゴ交響楽団(1990年)といった至高の超名演があるが、本演奏はこれらの横綱クラスに次ぐ大関クラスの名演と言えるのではないだろうか。

マーラーの交響曲第1番はマーラーの青雲の志を描いた作品であり、円熟がそのまま名演に繋がるとは必ずしも言えないという難しさがある。

実際に、アバドは後年、ベルリン・フィルの芸術監督に就任後まもなく同曲をベルリン・フィルとともにライヴ録音(1989年)しており、それも当時低迷期にあったアバドとしては名演であると言えなくもないが、本演奏の持つ独特の魅力には到底敵わないと言えるのではないだろうか。

これは、小澤が同曲を3度にわたって録音しているにもかかわらず、最初の録音(1977年)を凌駕する演奏が出来ていないこととも通暁するのではないかと考えられる。

いずれにしても、ベルリン・フィルの芸術監督に就任するまでのアバドの演奏は素晴らしい。

本演奏でも、随所に漲っている圧倒的な生命力とエネルギッシュな力感は健在だ。

アバドは、作品全体の構造を綿密に分析したうえで、各要素を絶妙のバランス感覚をもって表現している。

細部までアバドの的確な眼差しが行き届き、精緻に仕上げられたマーラーで、シャープな感覚でとらえられ、描き上げられた演奏と言うこともできる。

アバドはこの作品の微細な部分を精緻な視点で掘り下げるとともに、大局的な観点からの構造把握も忘れておらず、ここまで明晰なマーラーを聴くのは、筆者としても初めての体験であった。

それでいて、アバドならではの歌謡性豊かな歌心が全曲を支配しており、とりわけ第2楽章や第3楽章の美しさには出色のものがある。

終楽章のトゥッティに向けて畳み掛けていくような気迫と力強さには圧巻の凄みがあると言えるところであり、壮麗な圧倒的迫力のうちに全曲を締めくくっている。

いずれにしても、本演奏は、強靭な力感と豊かな歌謡性を併せ持った、いわゆる剛柔バランスのとれたアバドならではの名演に仕上がっていると高く評価したい。

また、シカゴ交響楽団の超絶的な技量にも一言触れておかなければならない。

当時のシカゴ交響楽団は、ショルティの統率の下、スーパー軍団の異名をとるほどのオーケストラであったが、本演奏でも若きアバドの指揮の下、これ以上は求め得ないような最高のパフォーマンスを発揮しているのも、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。

音質は、ダイナミックレンジが異常なほど幅広い録音であることも大きな特徴で、オーディオファンにも関心を持たれていた名盤であり、従来盤でも比較的満足できる音質ではあったものの、前述のベルリン・フィル盤がSHM−CD化されていることもあって、その陰に隠れた存在に甘んじていたと言える。

しかしながら、今般、同じくSHM−CD化による高音質化が図られたというのは、本演奏の素晴らしさに鑑みても大いに歓迎したいと考える。

SHM−CD盤であらためて聴いてみると、強靭なパフォーマンス一点張りのなかに、アバドの温かい人間味を感じることができるのである。

このSHM−CD盤で、今までヴェールに包まれていてわからなかった当演奏の新たな側面を提示してくれたことはとても素晴らしいことだ。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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