2015年06月25日

セル&クリーヴランド管のベートーヴェン:交響曲全集、序曲集


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ベートーヴェンの交響曲全集で、最も完成度の高い、かつ癖がなく聴きやすいものの1つではなかろうか。

大編成オーケストラを指揮しながら、引き締まった美学を貫いたセルのベートーヴェン演奏はスタンダードと呼ぶに相応しいものとして定評がある。

だが一方では、セルと言えば練習の鬼、厳格、一分の隙もない、というのが代名詞のようにに言われ逆に言うと面白みに欠けるという評価にもなっていた。

それはおそらくLP時代からの平板的で奥行きがない録音のせいで、今回のりマスタリングを聴いてその評価が一変してしまった。

本セットを改めて聴いてみると過度に力を入れず、洗練された正統派のベートーヴェンで、トスカニーニ並みの完璧なリズムとダイナミクスを備えつつも微妙なニュアンスや即興性にも富んでいることが良く分かった。

強烈な個性や情熱を感じさせる演奏も良いが、セルの堂々と揺るがぬ、かつ絶対だれないテンポと、クリーヴランド管弦楽団の鉄壁のアンサンブルによる引き締まった演奏は、迫力十分でも感情過多ではないので聴き飽きないし耳にもたれない。

セルというと、ドヴォルザークなどのチェコ系の作品やR.シュトラウスが高く評価されているようであるが、最も素晴らしいのはベートーヴェンであり、この全集がその証明である。

例によって、指揮者の特別な個性を際だたせるような表現ではないが、やや速めのテンポで高い合奏能力をもったオーケストラによって誠実に演奏されている。

オーケストラの各楽器が見事に解け合って、まるで1つの楽器のように聴こえ、知情意のバランスのとれた演奏で、曲の素晴らしさが率直に伝わってくる。

また、セルの全集はベートーヴェンの前向きで意志的な音楽世界を極めて直截に表現し、一貫して強い推進力を感じさせる。

妥協を許さない強靭なセルの音楽性とリーダーシップがベートーヴェンの作品における意志的側面を見事に浮き彫りにしている。

その点で現在も新鮮であり、このような全集がステレオで残っており安価に入手できることは有難いことだ。

鉄壁のアンサンブル、クールな表現スタイルと言われたセル&クリーヴランド管弦楽団であるが、パーヴォ・ヤルヴィなどの、近年のソリッドな演奏に慣れた耳からすると、むしろ暖かみ、人間味や、ロマンさえも感じさせる。

時代を考えれば当然であるが、大編成オケによるベートーヴェンがコンサート・レパートリーの主役だった時代の息吹を存分に味わえる。

演奏以上に驚かされたのが音質の良さである。

初期CDの音はあまり良くなく、オリジナル・紙ジャケットのセットは高かった上にすぐ品薄になってしまうなど、なかなか理想的な形で出てこなかったセルのベートーヴェン交響曲全集が、漸く万人が入手しやすい形でリリースされた。

リマスタリングは、かなり高い水準で成功しており、特に、少し録音の古い「エロイカ」が良好な音質に蘇っているのも嬉しい。

「エロイカ」はSACD化もされており、そちらも素晴らしい音質で聴けるが、音の骨太感、全体の密度感は今回のセットの方が上な気がする。

さざ波のような弦、適度な余韻をもたらす心地よいホールトーンなどが見事にとらえられており、従来盤と比較したところその違いに驚いてしまった。

テープヒスも、録音年代から考えると全体に低いレベルで抑えられている。

クリーヴランド管弦楽団のものすごい力量も良く分かり、当時世界一のオーケストラと言われたのが納得できる。

ところどころセルの唸り声のようなものも入っており一層生々しさを感じさせる。

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classicalmusic at 20:51コメント(3)トラックバック(0)ベートーヴェン | セル 

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コメント一覧

1. Posted by マイスターフォーク   2014年08月10日 16:06
子供の頃、17センチ盤ありエグモント、コリオラン持ってました。
演奏する立場から見てクラリネットのマルセラス氏の上手いこと!


ウィーンとのエグモントからの音楽もドラマチックで素晴らしいですね♪
2. Posted by 和田   2014年08月10日 18:31
この当時のクリーヴランド管弦楽団は、まさにインターナショナルなスーパー軍団でしたね。
3. Posted by Kasshini   2014年08月11日 14:30
youtubeで、ザルツブルク音楽祭でのヴィーンフィルとの共演、第9になりますが聴きました。
アルトも、歓喜の歌主題が現れてからのオーボエ・ソロも等質性を持って現れていることに「驚きを禁じえません。

来月にも買おうと思います今の私にとってもは、フルトヴェングラーWP1953ライブよりもシンクロします。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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