2015年05月03日

フルトヴェングラー&ベルリン・フィルのシューベルト:交響曲第9番「ザ・グレイト」(1942年ライヴ)、他


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定期公演の実況盤であり、良くも悪くも実演に於けるフルトヴェングラーの特徴が最大限に発揮された「ザ・グレイト」である。

それだけにフルトヴェングラーのファンには逸することのできぬものと言えよう。

フルトヴェングラーでも、これだけ感情を生に爆発させた例は珍しいほどだ。

第1楽章の主部をこんなに速いテンポで、これほど燃え上がるような迫力で指揮した人を筆者は知らない。

ものものしく、じっくりと開始して、次第に盛り上げてゆくという、フルトヴェングラーのいつものやり方とは違い、最初から夢中になっている。

したがって、著しく動的な演奏であり、聴く者もわれを忘れて引きずり込まれてしまう。

テンポの極端な変動も自在に行われ、第2主題はもちろんのこと、展開部へ入る瞬間の気分の変え方はまことに堂に行っている。

さらに提示部と展開部のそれぞれ終わりの部分や、コーダなどのアッチェレランドは常軌を逸しており、時には唐突である。

展開部の終わりで大きくテンポを落としたまま、再現部でア・テンポに戻らず、そのまま進行するのも即興的だ。

おそらく会場でこの実演に接していた人たちはフルトヴェングラーの呪縛にかかって興奮の極みを示してしたに違いなく、曲頭に多かった咳払いが主部に入るやほとんど聞こえなくなってしまうほどだが、1942年のフルトヴェングラーにはやや後年の円熟味が欠け、即興的にすぎて造型に乱れを見せているのは事実であろう。

にもかかわらず、これだけやり尽くしてくれればそんな疑問は吹っ飛び、裸身のフルトヴェングラーを垣間見る想いで、ファンにはこたえられない。

展開部の最後におけるホルンとティンパニの最強奏など、いったい何事が始まったのかと思うほどだし、コーダの決め方もさすがだが、ここだけはフィナーレの同じ部分とともに、音がマイクに入り切っていないもどかしさも残る。

第2楽章は毅然たる進行がシューベルトらしい温かいロマンティシズムを弱める結果になっているが、それでも曲が進むにつれてフルトヴェングラー独特の神秘な表情やテンポの揺れが頻出し、恍惚たる弦の歌も出て、細部まで堪能させてくれるのである。

スケルツォは速いテンポと素朴なリズムの躍動による生命力あふれた表現であり、メロディックな部分とリズミカルな部分でテンポがごく自然に変わるのも賛成だ。

最近は杓子定規な演奏が流行っているが、曲想によるテンポの動きは当然なくてはならぬところであり、それが自然であれば゛“イン・テンポ”なのである。

ただしこの楽章、アンサンブルや楽器のバランスに緻密さを欠くのと、トリオの平凡なのがマイナスと言えよう。

フィナーレは第1楽章とともに最もフルトヴェングラーらしい部分だ。

ことに冒頭を芝居気たっぷりな遅いテンポで開始し、みるみるアッチェレランドを掛けてゆくやり方はフルトヴェングラーならではの表現で、まったくうれしくなってしまう。

大時代だと笑う人もあろうが、これこそフルトヴェングラーのドラマであり、真実性にあふれているため、少しも不自然ではない。

むしろこのようなフルトヴェングラー節を享受できず、のめり込めない人のほうが不幸だと思う。

それにしてもフィナーレのテンポは速い。

ひびきとダイナミックスはあくまで凄まじく、トランペットが強奏され、再現部のスピード感は異常なほどで、ブルックナーの「第9」におけるスケルツォを想わせ、ついて行けない人もあろうが、会場で生を直接に聴けば、おそらく居ても立ってもいられないはずだ。

そしてその中に、たとえば展開部の冒頭のように、テンポが落ち、テーマが思いがけぬみずみずしさで登場して、ハッとさせる部分も含まれているのである。

フルトヴェングラーはティンパニを人一倍活躍させる指揮者であり、ベートーヴェンの「第4」やブラームスの「第3」のように、ティンパニの追加がうるさく感じられる曲もあるが、この場合は成功していると思う。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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