2022年09月09日
いわゆるドイツ正統派のブラームス演奏とは百八十度異なる異色の演奏🤔ツィマーマン&バーンスタインのブラームス:ピアノ協奏曲全集🎦
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本DVDには、ショパンと同じポーランド生まれの類稀な才能を持ったピアニスト、クリスティアン・ツィマーマンと卓越したテクニックで独特の情感を創り出す天才指揮者、レナード・バーンスタインの共演が収録されている。
第1番は1984年、第2番は1985年の録音であり、ツィマーマンが30歳間近、バーンスタインが急逝する5年前の作品となるが、素晴らしい名演と高く評価したい。
バーンスタインは、かつてニューヨーク・フィルの音楽監督の時代には、いかにもヤンキー気質の爽快な演奏の数々を成し遂げていたが、ヨーロッパに拠点を移した後、とりわけ1980年代に入ってからは、テンポは異常に遅くなるとともに、濃厚でなおかつ大仰な演奏をするようになった。
このような芸風に何故に変貌したのかはよくわからないところであるが、かかる芸風に適合する楽曲とそうでない楽曲があり、途轍もない名演を成し遂げるかと思えば、とても一流指揮者による演奏とは思えないような凡演も数多く生み出されることになってしまったところだ。
具体的には、マーラーの交響曲・歌曲やシューマンの交響曲・協奏曲などにおいては比類のない名演を成し遂げる反面、その他の作曲家による楽曲については、疑問符を付けざるを得ないような演奏が目白押しであったように思われる。
本盤の演奏とほぼ同時期に、バーンスタインはウィーン・フィルとともにブラームスの交響曲全集をライヴ録音(1981〜1982年)しており、当該演奏もどちらかと言えば疑問符を付けざるを得ない点も散見されるところであるが、ウィーン・フィルの懐の深い音色が演奏を浅薄なものに陥るのを避けるための大きな防波堤になり、少なくとも佳演との評価は可能な演奏に仕上がっている。
一方、本盤の演奏においても、基本的には交響曲全集の場合と同様であり、いかにもバーンスタインの晩年の芸風が色濃く反映された演奏に仕上がっている。
両曲の第1楽章冒頭の超スローテンポによる開始には殆ど閉口させられるが、その後も極めて遅いテンポ、ゲネラルパウゼの多用、粘ったような曲想の進行、濃厚さの極みとも言うべき表情過多な表現などが駆使されており、これ以上は考えられないような濃密な音楽が構築されている。
したがって、いわゆるドイツ正統派のブラームス演奏とは百八十度異なる異色の演奏であり、バーンスタインがマーラーの交響曲の演奏で垣間見せるヒューマニティ溢れる熱き心で満たされているとさえ言えるだろう。
まさに、バーンスタインの体臭が芬々としている演奏と言えるところであり、これは好き嫌いが明確に分かれる演奏であるとも言えるところだ。
もっとも、本盤の演奏では、ツィマーマンのピアノが清新さに満ち溢れた名演奏を展開していることから、バーンスタインの体臭芬々たる濃厚な演奏が若干なりとも中和されていると言えるところであり、交響曲全集ほどの違和感を感じさせることがないと言える。
ツィマーマンのピアノ演奏については、若さ溢れる演奏でありながら、卓越した技術と音楽性がブレンドされ、既にヴィルトゥオーゾとしての風格が出始めている演奏だ。
これをバーンスタインがさらに昇華させており、ひとつの芸術作品としての存在感を示している。
ツィマーマンの若い頃の演奏を改めて観て感じたが、彼の音楽性はブレていないように思われる。
それは、ツィマーマンが音楽に対して真摯にそして一切の妥協を許さず向き合っている証拠である。
今なお進化し続けているのは、ツィマーマンの根幹にこれが存在するからなのだろう。
そして、ウィーン・フィルによる懐の深い美演が、演奏全体に独特の潤いを与えているのを忘れてはならないところだ。
いずれにしても、以上の点を総合的に勘案すれば、本盤の演奏を名演と評価するのにいささかも躊躇するものではない。
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