2015年05月10日

ボロディンSQのショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1〜13番


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本セットには、第一期ボロディン弦楽四重奏団によるショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1〜13番(1962〜72年ステレオ録音)が収められている。

1945年に結成、チェロのベルリンスキーを精神的支柱に、今なお数多い現代の弦楽四重奏団をリードする、ロシアの名クヮルテットによるショスタコーヴィチの弦楽四重奏録音の復活を大いに歓迎したい。

結成時のオリジナル・メンバーによるボロディン・クヮルテット、いわゆる「ドゥビンスキー時代」の彼らのかけがえのない録音がChandos Historicalから着々と世に出ているが、中でもこれは特に注目に値するセットと言えよう。

演奏はどれも最高の評価を獲得してきたもので、数あるショスタコーヴィチの弦楽四重奏録音の中にあって、その厳しいスタイルはまさに空前絶後。

結成当初から作曲者に演奏法を直接指導されたという同団の演奏には、「ボロディンSQなくしてショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は語れない」との絶賛が数多く寄せられている、いわばショスタコ四重奏の規範として知られる名盤である。

レコーディング当時、まだ作曲されていなかった第14番と第15番を含んでいないのは残念とはいえ、この時期の彼らの演奏をまとめて聴けるこのセットの価値にはまさに圧倒的なものがある。

ショスタコーヴィチは、弦楽四重奏曲を交響曲と同様に15曲も作曲したが、これはバルトークによる6曲の弦楽四重奏曲と並んで、20世紀における弦楽四重奏曲の最高傑作との評価がなされている。

確かに、作曲書法の充実度や、内容の奥深さなどに鑑みれば、かかる評価は至当であると考えられる。

ショスタコーヴィチは、旧ソヴィエト連邦という、現在で言えば北朝鮮のような非民主的な独裁国家で、粛清の恐怖を耐え忍びながらしたたかに生き抜いた作曲家であった。

かつて一世を風靡した「ショスタコーヴィチの証言」は現在では偽書とされているが、ショスタコーヴィチに関して記したその他の様々な文献を紐解いてもみても、その交響曲や弦楽四重奏曲などには、かかる粛清の恐怖や、スターリンをはじめとする独裁者への批判や憤り、独裁者によって粛清された犠牲者への鎮魂などが色濃く反映されている。

したがって、旧ソヴィエト連邦の時代を共に生き、粛清への恐怖に実際に身を置いた者こそが、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲に込められたこのような深遠な世界をよりうまく音化することができると言えるのではないだろうか。

ボロディン弦楽四重奏団は、前述の通り旧ソヴィエト連邦下において1945年に結成され、それ以降も旧ソヴィエト連邦において活動を行ってきた団体である。

したがって、その演奏は、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の心眼に鋭く切り込んでいくという鋭さ、そして凄みにおいては、他のいかなる弦楽四重奏団が束になってもかなわないレベルに達していると言えるところであり、その演奏の彫りの深さは、尋常ならざる深遠さを湛えている。

とりわけ、晩年の弦楽四重奏曲の凄みのある演奏には戦慄を覚えるほどであり、これは音楽という次元を通り越して、あたかもショスタコーヴィチの遺言のように聴こえるのは筆者だけではあるまい。

なお、ボロディン弦楽四重奏団は、1978年から1984年にかけて、本録音当時作曲されていなかった第14番及び第15番を含むすべての弦楽四重奏曲の録音を行っており、各楽曲の本質への追求度という意味においては当該演奏の方が数段上であると考えられなくもないが、その分、演奏自体はかなり冷徹なものとなっていると言えなくもない。

新盤も決定的名盤と記されるに相応しい全集であるが、そのあまりにも透徹した非人間的な響きに敬遠を覚えた人も少なくないと思う。

しかしこの旧盤には新盤にはないロマンティシズムの人間的響きが感じられ、未だ旧ソ連の鉄の教育による同質音楽ではなく、ハイドン、ベートーヴェンにもひけをとらない「四重奏」の音楽を堪能できるものとなっている。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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