2015年05月06日

ロストロポーヴィチ&ワシントン・ナショナル響のショスタコーヴィチ:交響曲第5番、プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」(抜粋)


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本盤に収められたロストロポーヴィチによるショスタコーヴィチの交響曲第5番については、かつてLPで聴いた時のことを鮮明に記憶している。

本演奏の録音は1982年であるが、この当時は、現在では偽書とされている「ショスタコーヴィチの証言」が一世を風靡していた時期に相当し、ロストロポーヴィチのショスタコーヴィチとの生前における親交から、本演奏は証言の内容を反映した最初の演奏などともてはやされたものであった。

筆者は「証言」をむさぼり読むとともに本演奏を収めたLPを聴いたものの、若かったせいもあるとは思うのであるが、今一つ心に響くものがなかったと記憶している。

その後、大学生になってCDを購入して聴いたが、その印象は全く変わることがなかった。

そして、先般SHM−CD化されたのを契機に、久々に本演奏を聴いたが、やはり心に響いてくるものがなかったと言わざるを得ない。

確かに、巷間言われるように本演奏には楽曲の頂点に向けて畳み掛けていくような緊迫感や生命力溢れる力強さなどが漲っているが、この時点でのロストロポーヴィチは、手兵のワシントン・ナショナル交響楽団をうまく統率し切れずに、いささか空回りしているような気がしてならないのだ。

加えてオケの演奏レヴェルが低く、ワシントンD.C.という都市にあるオケでありながら、ボルティモア交響楽団や、ピッツバーグ交響楽団、サンフランシスコ交響楽団、ヒューストン管弦楽団、ミネソタ管弦楽団などのローカル・オケとも比較が出来ないほど、サウンドが荒く、アンサンブルが成立していない状態での録音である。

このオケは、「ナショナル」という冠をつけているが、国立の楽団ではない。

ただ、アメリカ合衆国大統領の就任式で国歌等を演奏するのは、慣例としてこの楽団の仕事になっているらしい。

その割に、楽団の音色、響きは発展途上のオケのままという感じで、音色というか響きに滑らかさがなく、ざらざらしていて埃っぽい。

当然透明感がなく、第1楽章から平坦で変化のないフレーズどり(オケのサウンドがひどく、ダイナミクスレンジも狭いようだ)で、第3楽章などは聴くに堪えない音を出していて、鈍重な弦楽器の厚ぼったい響きに歯切れの悪さを覚えるだけである。

やや雑然とした演奏に聴こえるのもおそらくはそのせいであり、ロストロポーヴィチによる同曲の演奏であれば、いささか大人しくはなったと言えるが、後年の2つの録音、(ワシントン・ナショナル交響楽団との1994年盤(テルデック)又はロンドン交響楽団との2004年盤(LSO))の方がより出来がいいと言えるのではないだろうか。

特に後者は音質が優れているだけでなく、オケの演奏技術もかなり向上して、音程、サウンドのテクスチャー、音のブレンドなどに格段の進歩を見せている。

他方、プロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」からの抜粋については、ロシア風の民族色に満ち溢れた名演と高く評価したい。

ロストロポーヴィチがワシントン・ナショナル交響楽団の音楽監督を務めていた頃の、彼の内面の激情が燃えたぎるような精力的なこの演奏は、プロコフィエフの傑作に鮮やかに光を当てる結果を招来したと言えるだろう。

録音は、従来盤でもかつてのLPと同様に十分に満足できる音質であったが、今般のSHM−CD化によって音質がやや鮮明になるとともに、音場が若干幅広くなったことについては評価したい。

全体の評価としては、「ロメオとジュリエット」の名演とSHM−CD化による若干の高音質化を加味して準推薦の評価とさせていただくこととする。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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