2015年05月24日

クレンペラー&ウィーン・フィル名演集


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クレンペラーによって遺されたライヴ録音のうち、これだけまとまった形で、しかも世界最高のオーケストラ、ウィーン・フィルとの競演というスリルを持ったものは他に存在しない。

ここでのクレンペラーの演奏は、ウィーン・フィルの優美な演奏も相俟って、重厚長大というのではなく、音楽のニュアンスが豊穣なのだ。

音質はデッドで、通例我々がムジークフェライン・ザールに期待する残響の美しさはなく、ウィーン・フィル独特の音色もあまり感じられず、くすんだ音である。

それにテスタメント独特の中・低域が張り出したリマスタリングが加わり、録音状態はベストとは言いがたい。

しかし、ステレオ録音ゆえ、雰囲気は豊かであり、楽器の分離はやや悪いが、スケールの大きさと情報量の多さは素晴らしい。

演奏はいずれも巨大なスケールと剛毅な曲想の運びの中にもウィーン・フィルの魅力、そして実演ならではの気迫や緊張感を有している。

収録された演奏はどれも素晴らしいが、分売では買えないブラームスのドイツ・レクイエムが本セットには収められているのが嬉しい限りだ。

こちらはモノラルでありながら、情報量が豊かで鮮明、テンポはむしろ速めであり、ドラマティックな熱演である。

白眉は何と言ってもブルックナーの交響曲第5番だ。

第1楽章の何物にも揺り動かされることのないゆったりとしたテンポによる威容に満ちた曲想の運びを何と表現すればいいのであろうか。

どこをとってもいささかも隙間風の吹かない重厚さと深い呼吸に満ち溢れている。

ブラスセクションの強奏などもややゴツゴツしていて剛毅ささえ感じさせるが、それでいて音楽が停滞することなく滔々と流れていくのが素晴らしい。

第2楽章は、クレンペラーとしては、決して遅すぎないテンポによる演奏であるが、木管楽器の活かし方など実に味わい深いものがあり、厚みのある弦楽合奏の彫りの深さ、格調の高さには出色のものがある。

後半のブラスセクションがやや直線的で武骨さを感じさせるのは好みが分かれると思われるが、いたずらに洗練された無内容な演奏よりはよほど優れていると言えるだろう。

第3楽章は中庸のテンポを基調としているが、ブラスセクションの抉りの凄さや弦楽合奏と木管楽器のいじらしい絡み方など、クレンペラーの個性的かつ崇高な指揮芸術が全開である。

トリオは一転してやや遅めのテンポで味わい深さを演出しているのも実に巧妙である。

終楽章は、第1楽章と同様に悠揚迫らぬ荘重な曲想の展開が際立っており、低弦やティンパニの強靭さ、そして抉りの効いたブラスセクションの咆哮など、凄まじさの限りである。

そして、こうした演奏を基調としつつ、輻輳するフーガを微動だにしない荘重なテンポで明瞭に紐解いていく峻厳とも言うべき指揮芸術には、ただただ圧倒されるほかはなく、コーダの壮大な迫力にはもはや評価する言葉が追い付かないほどだ。

いずれにしても、本演奏は、クレンペラーの偉大な指揮芸術の凄さを堪能することができるとともに、クレンペラー&ウィーン・フィルでしか成し得ない至高の超名演と高く評価したいと考える。

次点はマーラーの交響曲第9番。

悠揚迫らぬ曲想の運び方、スケールの雄大さ、木管楽器の巧妙な活かし方など、ウィーン・フィルの濃厚な美演も加わって、これ以上は求め得ないほどの至高の高みに聳えたつ超名演に仕上がっていると言っても過言ではあるまい。

これほどの劇的な交響曲なのに、殆ど微動だにしない、ゆったりとしたインテンポで通した演奏は、純音楽的な同曲の名演を成し遂げたカラヤンやバルビローリなどにも見られない特異な性格のものと言える。

それでいて、マーラーが同曲に込めた死との戦いや、生への妄執や憧憬などが、我々聴き手にしっかりと伝わってくるというのは、クレンペラーの至高の指揮芸術を示すものと言えるだろう。

あまりのスローテンポのため、例えば、第3楽章の後半や終楽章の頂点において、アンサンブルに多少の乱れが生じるが、演奏全体から滲み出てくる同曲への深い愛着と情念を考慮すれば、殆ど気にならない演奏上の瑕疵と言える。

その他の演奏も名演揃いであり、クラシック音楽愛好家にはぜひ耳を傾けていただきたい宝物のようなボックスである。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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