2015年08月21日
ワイセンベルク&カラヤン名演集
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本盤には、ワイセンベルクのピアノ、カラヤンによる蜜月時代の名演集が収められている。
演奏はいかにも全盛期のカラヤン&ベルリン・フィル(チャイコフスキーはパリ管弦楽団)ならではの圧倒的なものである。
一糸乱れぬ鉄壁のアンサンブル、唸るような低弦の重量感溢れる力強さ、ブリリアントなブラスセクションの響き、桁外れのテクニックで美音を振りまく木管楽器群、そして雷鳴のように轟きわたるティンパニなど、圧倒的な音のドラマが構築されている。
そして、カラヤンは、これに流麗なレガートを施すことによって、まさに豪華絢爛にして豪奢な演奏を展開しているところであり、少なくとも、オーケストラ演奏としては、本盤に収められたいずれの楽曲の演奏史上でも最も重厚かつ華麗な演奏と言えるのではないだろうか。
他方、ワイセンベルクのピアノ演奏は、カラヤン&ベルリン・フィルの中の1つの楽器と化していたと言えるところであり、その意味では、カラヤン&ベルリン・フィルによる圧倒的な音のドラマの構築の最も忠実な奉仕者であったとさえ言えるが、よくよく耳を傾けてみると、ワイセンベルクの強靭にして繊細なピアノタッチが、実はカラヤン&ベルリン・フィルの忠実な僕ではなく、むしろ十二分にその個性を発揮していることがわかる。
カラヤンは、今を時めくピアニストとともにチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を録音する傾向があるようだ。
リヒテル、ワイセンベルク、ベルマン、そして最晩年のキーシンの4度に渡って同曲を録音しているが、そのいずれもが、これから世に羽ばたこうとしていた偉大なピアニストばかりであるという点においては共通している。
実に充実したスケールを備えた演奏で、パリ管弦楽団の抒情的な美しさを持つ魅力を生かしたカラヤンの演奏に対し、ワイセンベルクも、カラヤン設定のテンポと表現の中で、冴えた技によって明確な演奏をきかせてくれる。
美しい憂愁をたゆたうように歌いつぐ第2楽章は特に印象的で、デリケートなピアノにも注目される。
もちろん、カラヤン&パリ管弦楽団の演奏は凄いものであり、ベルリン・フィルとの間で流麗なレガートを駆使して豪壮華麗な演奏の数々を成し遂げていたカラヤンにしてみれば、パリ管弦楽団との本演奏では若干の戸惑い(特に、パリ管弦楽団において)なども見られないわけではないが、そこはカラヤンの圧倒的な統率力によって、さすがにベルリン・フィルとの演奏のレベルに達しているとは言えないものの、十分に優れた名演奏を行っていると言えるところだ。
ラフマニノフは、ワイセンベルクとカラヤンが残したレコーディングの中でもトップを争う素晴らしい出来栄え。
まずはカラヤン&ベルリン・フィルによる同曲史上最高と言いたくなる壮麗な伴奏には驚くほかはなく、その圧倒的な勢力に対峙するワイセンベルクの一種「クリスタル・ビューティー」とでも形容すべきピアニズムが、濃厚かつ華麗な抒情美の世界を展開する。
もっとも、流麗なレガートを駆使して豪壮華麗な演奏の数々を成し遂げていたカラヤンの芸風からすれば、ラフマニノフの楽曲との相性は抜群であると考えられるところであるが、カラヤンは意外にもラフマニノフの楽曲を殆ど録音していない。
カラヤンの伝記を紐解くと、交響曲第2番の録音も計画されていたようではあるが、結局は実現しなかったところだ。
したがって、カラヤンによるラフマニノフの楽曲の録音は、本盤に収められたピアノ協奏曲第2番のみということになり、その意味でも、本盤の演奏は極めて貴重なものと言えるだろう。
ベートーヴェンは、ワイセンベルクならではの研ぎ澄まされた技量と抒情を味わうことができる名演だ。
しかしここでもゴージャスなカラヤンサウンドが全体を支配していて、ピアノ協奏曲ではなく、あたかも一大交響曲を指揮しているような圧倒的な迫力を誇っている。
その重戦車の進軍するかのような重量感においては、古今東西のあらゆる演奏をわきに追いやるような圧巻のド迫力を誇っている。
このような演奏では、ワイセンベルクのピアノは単なる脇役に過ぎず、要は、いわゆるピアノ協奏曲ではなく、ピアノ付きの交響曲になっている。
それ故に、カラヤンのファンを自認する高名な評論家でさえ、「仲が良い者どうしの気ままな演奏」(リチャード・オズボーン氏)などとの酷評を下しているほどだ。
しかしながら、筆者は、そこまでは不寛容ではなく、本演奏は、やはり全盛期のカラヤン、そしてベルリン・フィルでないと成し得ないような異色の名演であると高く評価したい。
いわゆるピアノ協奏曲に相応しい演奏とは言えないかもしれないが、少なくとも、ベートーヴェンの楽曲の演奏に相応しい力強さと重厚さを兼ね備えていると思われるからである。
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