2015年05月11日

フルトヴェングラー&ベルリン・フィルのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番(ハンゼン)/交響曲第7番(1943年ライヴ)[SACD]


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これはフルトヴェングラーの遺した数多いディスクの中でも、特に素晴らしい名演奏の1つである。

コンラート・ハンゼンは1906年生まれのドイツのピアニストで、あまり有名ではないが、この「第4」に関するかぎりバックハウスよりも遥かに見事だ。

全体の主導権は指揮者が握っており、たとえば造型などまったく自由自在なフルトヴェングラーのそれであるが、ハンゼンはあたかも自分自身が感じている如く自然に溶け込んでいる。

いや、ハンゼンは精神的にロマンティックなピアニストなのであり、要するにフルトヴェングラーと同じ感情を持った人なのであろう。

おそらく独奏をさせればこんなにすごい造型は創造し得ないだろうが、天才的な指揮者と協演して自己の理想を発見し、心からの尊敬と共感と歓びとをもって弾いているに違いない。

実際、ハンゼンのピアノにはすべての人間感情が隠されている。

素朴でしっとりとした雰囲気、澄みきったリリシズムを基本としながらも、テンポを大きく動かし、大胆きわまる感情移入を随所に見せる。

第1楽章展開部冒頭の驚くべき遅いテンポ、第1楽章再現部の聴く者を興奮させずにはおかない打ち込み方、第2楽章の強い訴えなどがその例だが、至るところに見せる左手の強調、表情豊かな盛り上げ、チャーミングなトリル、ロマンティックな歌、付点音符の名人芸的な弾ませ方など、これ以上は望めないというぎりぎりの線にまで達している。

そしてフルトヴェングラー&ベルリン・フィルの精神そのものの響きがハンゼンのソロを有機的に包み込み、特に繊細さと寂しい静けさの2点においては比較するものとてあるまい。

ベートーヴェンの意図をこれほどニュアンス豊かに感じきって演奏した例は他に皆無だし、ハンゼンもまことに印象的だ。

フィナーレのコーダにおける激しい加速、それ以上に第1楽章コーダの極度に遅いテンポも別の曲を聴く趣があろう。

しかも両者はつとめて即興的な再現を試みているらしく、それが演奏をたった今生まれたようなみずみずしさで蔽うのである。

ともかく、ハンゼンもフルトヴェングラーも、ここではやりたいことをすべてやり尽くしている。

こんなに主観的な演奏はないとも言えるが、聴いていると演奏者の存在は忘れてしまい、音楽の美しさだけが身に迫ってくる。

ベートーヴェンの「第4協奏曲」を徹底的に堪能できるのであり、この演奏によって初めてこの曲の良さを知る人もきっと多いに違いない。

特筆すべきは第1楽章のカデンツァで、ハンゼンはここでベートーヴェン自作のものを使用しながら、後半に入ると自由に変化させ、「熱情ソナタ」の動機さえも組み入れて素晴らしい効果を上げている。

ことによるとフルトヴェングラーの考えが入っているのかもしれない。

他方、ベートーヴェンの「第7交響曲」は、あくまでも私見であるが、フルトヴェングラー&ウィーン・フィル(1950年盤)、クレンペラー&ニューフィルハーモニア管(1968年盤、EMI)、そしてカラヤン&ベルリン・フィル(1978年盤、パレクサ)を名演のベスト3と考えているが、劇的な迫力という観点からすれば、むしろ1950年盤よりも上ではないかと思われ、前述の1950年盤との比較をどうしても考えてしまう。

テンポはめまぐるしく変化し、随所におけるアッチェレランドの連続、金管楽器の最強奏や低弦によるドスの利いた重低音のド迫力など、自由奔放と言ってもいいくらい夢中になって荒れ狂うが、それでいて全体の造型にいささかの揺るぎもなく、スケールの雄大さを失わないのは、フルトヴェングラーだけが成し得た天才的な至芸と言えるだろう。

SACD化により、さすがに最新録音のようにはいかないが、フルトヴェングラー&ベルリン・フィルの戦時中の至芸を従来盤よりも鮮明な音質で味わうことができる。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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