2015年08月22日
クーベリック&バイエルン放送響のモーツァルト、シューマン、ブルックナー:交響曲集
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20年近くに渡ってバイエルン放送交響楽団の首席指揮者を務めたクーベリックは、任期終了後も客演を続け、通算すると四半世紀ほどの親密な関係をオーケストラと構築していたことになる。
そのクーベリックが長年専属関係にあったDGを離れ、他のレーベルにレコーディングを開始し始めたのは1970年代後半のことであった。
中でも目立っていたのは、首席指揮者任期終了の前年から翌年までの3年をかけて取り組んでいたSONYのレコーディング・プロジェクトである。
曲目はモーツァルトの後期6大交響曲にシューマンの交響曲全集、そしてブルックナーの交響曲第3番と第4番というもので、長年の良好な関係を反映してか、演奏はどれも高水準なものとなっている。
レコード・アカデミー賞受賞の名盤としても有名なこのモーツァルト後期6大交響曲集は、伝統的スタイルを基調とした柄の大きな仕上げが特徴的なものであるが、楽器配置がヴァイオリン両翼型という事もあって声部の見通しは良く、飛び交うフレーズ群の醸し出す生き生きとした雰囲気が実に魅力的。
また、美しい旋律をエレガントに歌わせる一方で、山場では強靱なダイナミズムで決めてくるあたりもこうしたスタイルの美点を生かしたものと言える。
シューマンはバイエルン放送響の暖かみのある重厚なサウンド・キャラクターと、要所で明晰な響きを確保しやすい楽器配置の効果により、4曲共にシューマンの音楽が細部までじっくり味わえる仕上がりとなった素晴らしい演奏。
全体のスケールは大きく、陰影豊かな表現が、コントラストで聴かせる演奏とは異なる複雑な味わいをも感じさせてくれる。
組み合わせの「マンフレッド」序曲も悲痛なロマンティシズムの美しい名演。
実演ではよくブルックナーをとりあげ、その功績からブルックナー・メダルも授与されていたクーベリック。
実際、残された録音を聴くとどれも充実した演奏であることがわかるが、セッション・レコーディングが残されたのは、なぜか第3番と第4番だけ。
演奏は力強くスケールの大きなものであるが、そこに込められた情感の深さもまたクーベリックならではの素晴らしいものだ。
クーベリックはここで、息の長いフレーズを巧みに扱い、豊かなイントネーションと自然な呼吸感を生み出すことに成功。
金管群の扱いも見事なもので、当時、すでに機能的にはベルリン・フィルに肉薄していたバイエルン放送響から立体的で奥の深い響きを引き出している。
こうしたサウンド面の魅力にSONYの録音技術が大きく貢献していたことは確かなようで、ダイナミック・レンジ、周波数レンジ、帯域バランス、解像度、パート・バランスなどすべての要素が申し分なく、また、セッション会場が、音の良さで知られるミュンヘンのヘルクレスザールということもあってか、直接音と間接音のバランスも自然であり、全体に非常にグレードの高い仕上がりとなっている。
なお、第3番の使用楽譜は第2稿でフリッツ・エーザーが校訂したヴァージョン。
この楽譜は基本的にはレオポルト・ノヴァーク校訂による第2稿と同じであるが、スケルツォの最後にコーダが追加されていないという点で識別ができる。
色々な要素を省きスッキリした第3稿に較べて、随所に野趣あふれる音楽が残され、味の濃い部分が多いこの第2稿は、ブルックナー・ファンには人気の高いヴァージョンでもあり、なにか「レオノーレ第2番」と「レオノーレ第3番」の関係に似ていなくもない。
ちなみにクーベリックはアウディーテ・レーベルのライヴ盤(1970年)、NMクラシックスのライヴ盤(1954年、廃盤)でも第2稿エーザー版を使用しているので、やはりこだわりがあったのであろう。
また、第4番ではスタンダードなノヴァーク版第2稿が用いられており、隅々まで気配りされた正統派の名演を心ゆくまで味わうことができる。
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