2015年05月14日

リヒテルのブラームス:ピアノ協奏曲第2番(ラインスドルフ)、ピアノ・ソナタ第23番「熱情」


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本盤に収められたブラームスのピアノ協奏曲第2番、そして、ベートーヴェンのピアノ・ソナタの第23番「熱情」は、東西冷戦の真っ只中であった時代、当時の鉄のカーテンの向こう側からやってきた壮年期のリヒテルによる記念碑的な名演だ。

協奏曲、ソナタともに、リヒテル最初のアメリカ・ツアーの折の録音で、その雄弁な表現に圧倒されてしまう。

リヒテルは、偉大なピアニストであったが、同時代に活躍していた世界的な大ピアニストとは異なり、全集を好んで録音したピアニストではなかった。

こうした事実は、これだけの実績のあるピアニストにしては大変珍しいとも言えるし、我々クラシック音楽ファンとしてはいささか残念であるとも言えるところである。

したがって、リヒテルが特定の作曲家のピアノ協奏曲全集やピアノ・ソナタ全集を録音したという記録はない。

ブラームスのピアノ協奏曲について言えば、スタジオ録音としては、単発的に、本盤の第2番などを録音し、後年にマゼールと再録音が遺されているが、他の諸曲についてはライヴ録音が何点か遺されているのみである。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタについても同様であり、こうしたことは、リヒテルがいかに楽曲に対する理解と確信を得ない限り、録音をしようとしないという芸術家としての真摯な姿勢の証左とも言えるのではないだろうか。

それだけに、本盤に収められた各曲の演奏は、貴重な記録であると同時に、リヒテルが自信を持って世に送り出した会心の名演奏とも言えるところだ。

ブラームスのピアノ協奏曲第2番にしても、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」にしても、リヒテルは、超絶的な技巧は当然のことながら、演奏全体のスケールの雄大さ、各フレーズに込められたニュアンスの豊かさ、そして表現の彫りの深さなど、どれをとっても非の打ちどころのない演奏を展開している。

人間業とは思えないような強靭な打鍵から繊細な抒情に至るまで表現の幅広さは桁外れであり、十分に個性的な表現を駆使していると言えるが、それでいて、そうした表現があくまでも自然体の中で行われており、芝居がかったところがいささかも見られない。

要は、恣意的な解釈が聴かれないということであり、ブラームスやベートーヴェンへの深い愛着と敬意以外には私心というものが感じられないのが見事である。

個性の発揮とスコア・リーディングの厳格さという二律背反する要素を両立させている点に、本演奏の凄みがあるとも言えるだろう。

とりわけ、ピアノ・ソナタ「熱情」におけるピアノが壊れてしまうと思われるような強靭な打鍵から繊細な抒情に至るまでのダイナミックレンジの幅広さには出色のものがあり、終楽章終結部の猛烈なアッチェレランドはもはや人間業とは思えないほどの凄みのある演奏に仕上がっていると高く評価したい。

またブラームスのピアノ協奏曲第2番では、オケとともに凄まじい迫力がその演奏にもたらされており、刺激的なものとなっている。

また、同曲に込められたブラームスの枯淡の境地とも言うべき美しい旋律の数々を、格調の高さを損なうことなく情感豊かに歌い抜いているのも素晴らしい。

そして、演奏全体のスケールの雄大さは、ロシアの悠久の大地を思わせるような威容を誇っていると言えるところであり、これぞまさしくリヒテルの本演奏におけるピアニズムの最大の美質と言っても過言ではあるまい。

バックをつとめているのはラインスドルフ&シカゴ交響楽団であるが、さすがにここでもドイツ風の重厚な演奏を行っており、リヒテルによる凄みのあるピアノ演奏のバックとして、最高のパフォーマンスを示していると高く評価したい。

リヒテルの再録音、即ちマゼールと共演したものもあるが、間延びしていて、ラインスドルフとの共演よりも集中力が保持できていないもどかしさを感じさせるところであり、それに対しこの旧盤は一気呵成に終楽章まで聴かせ、燃焼度も高く、オーケストラと一体となってブラームスの世界を紡ぎ出している。

いずれにしても、本盤に収められた各演奏は、リヒテルのピアニストとしての偉大さを十二分に窺い知ることが可能な圧倒的な超名演と高く評価したいと考える。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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