2015年05月25日
ブーレーズ&クリーヴランド管のストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」[SACD]
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本盤には、ブーレーズが指揮したストラヴィンスキーの3大バレエ音楽のうち、「春の祭典」のシングルレイヤーによるSACD盤が収められているが、驚天動地の衝撃的な超高音質である。
通常のボリュームで聴いても部屋が吹っ飛んでしまうようなとてつもない音圧であり、その圧倒的な超高音質に完全にノックアウトされてしまうことは必定である。
このような高音質化により、本盤は、様々な指揮者による同曲の演奏史上でも今なおトップの座に君臨する至高の超名演と高く評価したい。
ブーレーズは、同曲を本演奏も含め3度に渡って録音を行っている。
最初の録音はフランス国立放送交響楽団との演奏(1964年)であり、クリーヴランド管弦楽団との本演奏(1969年)が続き、そしてDGへの録音となった同じくクリーヴランド管弦楽団との演奏(1991年)が存在している。
このうち、最初の1964年盤については、圧倒的な名演との評価がなされてはいるものの一般配布されていなかったこともあって現在でも入手難。
3度目の1991年盤は、一般論としては立派な名演と言えるのではないかと考えられる。
もっとも、ブーレーズの芸風は、1990年代に入ってDGに自らのレパートリーを再録音するようになってからは、かつての前衛的なアプローチが影を潜め、すっかりと好々爺となり、比較的オーソドックスな演奏をするようになってきたように思われる。
もちろん、スコアリーディングについてはより鋭さを増しているものと思われるが、当該指揮によって生み出される音楽は比較的親しみやすいものに変容しており、これはまさしくブーレーズの円熟のなせる業ということになるのではないだろうか。
したがって、立派な円熟の名演ということには間違いないが、いわゆる普通の演奏になってしまっているとも言えるところであり、ブーレーズならではの強烈な個性が随分と失われてきていると言えるのではないかと思われる。
これに対して、本演奏は徹頭徹尾、ブーレーズならではの個性が全開の快演であると言えるところだ。
思い切った強弱の変化や切れ味鋭い強烈なリズムを駆使するなど、これ以上は求め得ないような斬新な解釈を施すことによって、ストラヴィンスキーによる難解な曲想を徹底的に鋭く抉り出しており、その演奏のあまりの凄まじさには戦慄を覚えるほどである。
これほどの先鋭的な解釈が施されたのは、おそらくは同曲演奏史上でも空前にして絶後であり、ブーレーズによる本演奏によって初めて、同曲が完全に音化されたと言っても過言ではあるまい。
まさに若き日の脂が乗り切ったブーレーズならではの先鋭的な超名演であり、これほど楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くした精緻な表現が施された演奏は比類がない。
ブーレーズの凄みのある指揮の下、一糸乱れぬアンサンブルで持ち得る実力を十二分に発揮し、最高の演奏を繰り広げているクリーヴランド管弦楽団にも大いに拍手を送りたい。
このような豪演を聴いていると、セル時代の全盛期のクリーヴランド管弦楽団の鉄壁のアンサンブルと超絶的な技量の凄さをあらためて認識させられるところだ。
音質は、前述のようにブーレーズによる衝撃的な超名演を味わうには不可欠のシングルレイヤーによるSACD盤であり、音質の鮮明さ、そして音場の幅広さ、音圧などのどれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACD盤の潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、ブーレーズによる圧倒的な超名演を現在望みうる最高の高音質SACDで味わうことができるのを大いに喜びたい。
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