2015年05月17日

カラヤン&ベルリン・フィルのシューベルト:交響曲第8番「未完成」、第9番「ザ・グレイト」(旧盤)


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広範なレパートリーを誇ったカラヤンであるが、カラヤンは必ずしもシューベルトを得意とはしていなかったようである。

カラヤン自身は、シューベルトをむしろ好んでおり、若き頃より理想の演奏を行うべく尽力したようであるが、難渋を繰り返し、特に、交響曲第9番《ザ・グレイト》に関してはフルトヴェングラーに任せるなどとの発言を行ったということもまことしやかに伝えられているところだ。

実際に、レコード芸術誌の「名曲名盤300選」などにおいても、シューベルトの交響曲第8番《未完成》や交響曲第9番《ザ・グレイト》の名演として、カラヤン盤を掲げた著名な音楽評論家が皆無であるというのも、いかにカラヤンのシューベルトの評価が芳しいものでないかがよく理解できるところだ。

しかしながら、それほどまでにカラヤンのシューベルトの演奏は出来が悪いと言えるのであろうか。

ともに、3回ずつ、セッション録音を残している《未完成》と《ザ・グレイト》であるが、本盤に収められたの演奏はそれぞれ2回目のものであり、カラヤン&ベルリン・フィルがまさに黄金の絶頂期を迎える少し前のもので、この頃ならではの推進力ある演奏に仕上がっており、すみずみまでカラヤンの美学に貫かれているのが特徴だ。

《未完成》は1回目のフィルハーモニア管弦楽団との録音よりも、さらにカラヤンの自己主張が強い。

しかし作品を歪曲するものではなく、美しく魅力的なアプローチであり、なめらかな旋律線に独自の感覚美を与えながら、全体を感興豊かに表出している。

《ザ・グレイト》は《未完成》より明るい音質で、演奏は全体に速めのテンポをとり、強い推進力をもってシューベルトのスコアから劇性と交響性を引き出している。

重厚な響きが快速テンポで運ばれるドライブ感が痛快、輝く金管群も後年のものとはまた違った響きであり、聴いていて爽快で、ベルリン・フィルの超絶技巧が冴えに冴え、信じられない重低音が鳴り響き、轟き渡っている。

壮年期のカラヤン、まさに血の気が多い時期だったのだろう、非常に強力な統率力でオケをドライブしている。

天下のベルリン・フィルといえども、今ではこんな壮絶な演奏は不可能になってしまった。

そして、本演奏に存在しているのは、徹頭徹尾、流麗なレガートが施されたいわゆるカラヤンサウンドに彩られた絶対美の世界であると言えるだろう。

シューベルトの交響曲は、音符の数が極めて少ないだけに、特にこのようないわゆるカラヤンサウンドが際立つことになると言えるのかもしれない。

したがって、シューベルトらしさといった観点からすれば、その範疇からは大きく外れた演奏とは言えるが、同曲が持つ音楽の美しさを極限にまで表現し得たという意味においては、全盛期のカラヤンだけに可能な名演と言えるのではないかと考えられる。

また、シューベルトの心眼に鋭く切り込んでいくような奥の深さとは無縁の演奏ではあると言えるが、これだけの究極の美を表現してくれたカラヤンの演奏に対しては文句は言えまい。

なお、カラヤンは当録音の以後にもこの2曲を含むシューベルトの交響曲全集をEMIに録音しており、華麗さと美への追求はいっそう徹底していると言えるが、カラヤンのアプローチがより徹底している本盤のほうを筆者はより好んで聴いている。

特にカラヤンを好まない聴き手にとっては、本演奏の方がより好ましい演奏に聴こえることも十分に考えられるところである。

いずれにしても、本演奏は、全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルが醸成した究極の美の世界、そしてカラヤン流の美学が具現化された究極の絶対美の世界を堪能することが可能な極上の美を誇る名演と高く評価したい。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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