2015年06月20日
ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデンのR.シュトラウス:管弦楽作品全集
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ケンぺ&シュターツカペレ・ドレスデンによるR.シュトラウスの管弦楽曲全集は、録音史上でも最高の名全集とも評される歴史的な名盤である。
ルドルフ・ケンぺは、ほぼ同世代の指揮者であった帝王ヘルベルト・フォン・カラヤンが、ベルリン・フィルなどとともに豪壮華麗な演奏を繰り広げたことや、膨大な数のレコーディングを行うなど、華々しい活躍をしていたこと、そして指揮者としては、これから円熟の境地を迎えるという時に急逝したこともあって、現在においても比較的地味な存在に甘んじているのではないだろうか。
芸風は異なるものの、職人肌という点においては共通している先輩格のカール・ベームが、当時隆盛期にあったイエローレーベル(DG)に、ウィーン・フィルとともにかなりの点数の録音を行ったこと、そしてケンペよりも長生きしたことも、そうしたケンペの地味な存在に甘んじているという状況に更なる拍車をかけているとも言えるだろう。
しかしながら、ケンペの存命中は、帝王カラヤンの豪壮華麗な演奏に対置する、いわゆるドイツ正統派の質実剛健な演奏をする指揮者として、ケンペはベームとともに多くのクラシック音楽ファンに支持された指揮者であった。
そのようなケンペの偉大さは、ミュンヘン・フィルとのベートーヴェンの交響曲全集や、ミュンヘン・フィルとのブラームスの交響曲全集、ブルックナーの交響曲第4番及び第5番などといった名演にもあらわれているところである。
しかしながら、これらの名演を大きく凌駕するケンペの最高の遺産が存在する。
それこそは今般、本セットに収められたR.シュトラウスの管弦楽曲全集であると言うのは、おそらくは衆目の一致するところではないだろうか。
本管弦楽曲全集には、2つの交響曲はもちろんのこと、主要オペラからの抜粋なども収められており、まさに空前にして絶後のスケールを誇っていると言っても過言ではあるまい。
ケンペによるR.シュトラウスの各楽曲へのアプローチは、例えば同じくR.シュトラウスの楽曲を十八番としていたカラヤンのように、豪華絢爛にして豪奢なものではない(かかる演奏も、筆者としては、あり得るべきアプローチの1つとして高く評価している)。
むしろ、演奏の様相は、質実剛健そのものであり、いかにもドイツ正統派と称された指揮者だけに、堅牢な造型美と重厚さを持ち合わせたものと言える。
かかる演奏は、R.シュトラウスと親交があり、その管弦楽曲を十八番としていたベームによる演奏と共通しているとも言えるが、ベームがいい意味においては剛毅、悪い意味ではあまり遊びの要素がない四角四面な演奏とも言えるのに対して、ケンぺの演奏には、カラヤンの演奏にようにドラマティックとは言えないものの、より柔軟性に富んだ劇的な迫力を有している言えるところであり、いい意味での剛柔のバランスのとれた演奏ということができるだろう。
いずれの楽曲も前述のようなケンぺの芸風が如実にあらわれた剛柔のバランスのとれた素晴らしい名演と高く評価したいと考える。
このセットのために使用された音源は、ロンドンのEMIアビー・ロード・スタジオに眠っていた旧東ドイツ制作のオリジナル・マスター・テープで、日本では既に2012年に全3巻計10枚のシングル・レイヤーSACD化が実現している。
今回はこれにR.シュトラウスの協奏曲全曲を追加してレギュラー・フォーマット用にリマスタリングし、9枚のCDに収めてしまったところにセールス・ポイントがある。
いずれのCDも殆んど収録時間目一杯に隙間無く曲目を密集させているが、1999年にリリースされ、またブリリアント・レーベルからもリイシューされた9枚組とは同一セッションでありながら、マスター及びリマスタリングが異なっていることもあって、音場の広がりと音像の生々しさには驚かされる。
また、旧盤には組み込まれていなかったオペラ『カプリッチョ』から、ペーター・ダムのホルン・ソロによる間奏曲「月光の音楽」が加わって、よりコンプリートな作品集に仕上がっている。
EMIのSACD盤では含まれてなかった協奏曲集も総て前述の東独音源からの新リマスタリング盤で、際立った音質改善を高く評価したい。
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