2015年05月27日
ショルティのヴェルディ:歌劇「オテロ」(旧盤)
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歌劇「オテロ」は、ヴァルディの数あるオペラの中でも最もショルティの芸風に合ったものと言えるのではないだろうか。
というのも、ショルティの芸風は切れ味鋭いリズム感とメリハリの明朗さであり、緊迫感にはらんだ劇的な要素を持った歌劇「オテロ」の性格との相性抜群のものがあるのではないかと考えられるからだ。
また、本盤の演奏は1977年のスタジオ録音。
ショルティも晩年の1970年代後半に入ってからは、自らの指揮活動の集大成とも評すべき円熟味溢れる懐の深い演奏を行うようになってきたところであり、本演奏においても、前述のような持ち味の鋭角的かつ明晰な芸風に加えて、かような円熟味溢れる彫りの深い表現を聴くことができるのが素晴らしい。
ショルティと同様に米国を拠点に活躍をした先輩格のハンガリー人指揮者、ライナーやセル、オーマンディなどとは異なり、オペラをレパートリーの中核としていたショルティではあるが、本演奏は、まさにオペラの演奏に自らの半生を捧げ、多大なる情熱を持って取り組んできたショルティの傑作のひとつとも言うべき至高の名演に仕上がっているとも言えるところだ。
それにしても、同オペラの演奏において、これほどまでにドラマティックで、重厚かつ強靭な迫力を有した演奏は、かのカラヤン&ウィーン・フィルほかによる超名演(1961年)に比肩し得るほどであると評し得るところであり、このような演奏を聴いていると、ショルティこそは、20世紀後半における最高のオペラ指揮者であったカラヤンに対抗し得る唯一の存在であったことがよく理解できるところだ。
そして、強靭な迫力と言っても、1960年代後半頃までに時として散見されたショルティの欠点でもあった、力づくの強引さは薬にしたくもなく、どこをとってもその音楽に奥行きのある懐の深さが感じられるのが素晴らしい。
ショルティの指揮するイタリア・オペラには、確固たる造形性に支えられた強い説得力があり、鋭敏な指揮に見事に反応して血肉を与えていくウィーン・フィルも名演だ。
各登場人物の細やかな心理の移ろいの描き方も万全であり、これぞまさしくオペラを知り尽くしたショルティならではの老獪ささえ感じさせる卓越した至芸と言えるだろう。
ショルティはテンポの設定ひとつとっても、声を聴かせる部分では遅めにたっぷりと聴かせ、ドラマティックな場面ではお得意のダイナミズムで一気にたたみこみ引き締める。
本オペラの演奏に際して、ウィーン・フィルを起用したというのも功を奏しており、前述のような重厚にして強靭な迫力は、カラヤンによる超名演にも匹敵するという意味で面目躍如たるものがある。
歌手陣も、ショルティが指揮するオペラならではの豪華な布陣であり、デズデモナ役のM・プライスの情感豊かな力と輝きに満ちた名唱が最も印象的で、オテロ役に定評があったというコッスッタも彼のベストの歌唱を示しており、感情移入の強さが大きな魅力だ。
両者とも歌手としても脂ののった時期の演唱で、安定した歌唱を聴かせてくれるのが魅力だ。
他の諸役も水準の高い歌唱で、ショルティが卓越した統率力で全体を見事にまとめ上げている。
また、ウィーン国立歌劇場合唱団やウィーン少年合唱団も最高のパフォーマンスを発揮していると評価したい。
ショルティは後年に手兵シカゴ交響楽団と再録音しており、そちらも名演であるが、オテロ役のパヴァロッティの声質が役柄に必ずしも適していないとも言えるところであり、筆者としては、旧盤の方を採りたい。
そして、今は無きゾフィエンザールの豊かな残響を活かした英デッカによる名録音も、今から40年以上の前とは思えないような極上の高音質を誇っていると言えるところであり、本盤の価値を高めるのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。
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