2015年06月17日

ショルティ&ロンドン・フィルのエルガー:交響曲第1番、第2番、他


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広範なレパートリーを誇ったショルティであるが、英国王室から「サー」の称号を得ただけに、英国音楽、特にエルガーの楽曲を得意としていたことについては意外にもあまり知られていない。

そのレパートリーは、2つの交響曲や行進曲「威風堂々」、チェロ協奏曲、エニグマ変奏曲、その他の管弦楽曲など多岐に渡っている。

ショルティと同様に数多くのレコーディングを遺した先輩格のカラヤンは、エルガーの楽曲を殆ど録音しなかったし、後輩のバーンスタインもエニグマ変奏曲と行進曲「威風堂々」の一部のみの録音にとどまっている。

そして、ハンガリー系の指揮者のライナーやオーマンディ、セルなどの録音歴などを考慮に入れても、ショルティのエルガーへの傾倒ぶりがよく理解できるところだ。

本盤には、エルガーの交響曲第1番及び第2番などが収められているが、いずれもエルガーを得意としたショルティならではの素晴らしい名演と高く評価したいと考える。

オーケストラは、他のエルガーの楽曲の場合と同様に、シカゴ交響楽団ではなく、ロンドン・フィルを起用しているが、楽曲によってオーケストラを使い分けるというショルティなりの考え方によるものではないかとも思われる。

エルガーの交響曲第1番は、英国の作曲家の手による交響曲の最高峰である。

にもかかわらず、英国出身の指揮者による演奏は頻繁に行われているものの、それ以外の国の指揮者による演奏は驚くほど少ない。

作品の質の高さを考えると、実に惜しい気がする。

そんな数少ない指揮者の中で、ショルティがエルガーの交響曲第1番と第2番の録音を遺してくれたことは、何と素晴らしいことか。

ショルティは、この録音に先立って、エルガーによる自作自演を繰り返し聴いて臨んだということであるが、この点に照らしても、ショルティが単なる余興ではなく、真摯にこの傑作交響曲に取り組んだことがよくわかる。

演奏の性格を大観すると、英国の指揮者による演奏に顕著な哀切漂うイギリスの詩情を全面に打ち出したものではない。

むしろ、ドイツの正統派交響曲を指揮する時と同様のアプローチにより、古典的とも言える解釈を示している。

それでいて決してこじんまりとまとまっているのではなく、いかにもショルティらしいスケールの雄大さを兼ね備えている。

第1楽章冒頭からスコアをよく考究した表現で、非常にこまやかな陰影をもち、中庸なテンポによる造形と洗練された音彩が美しく、4つの楽章の性格も的確に示されている。

もちろん、ショルティの欠点として巷間指摘されている、ヘビーなアクセントや力づくの強奏などもみられないわけではないが、例えば第3楽章など、歌うべきところは心を込めて歌い抜くなど、決して無機的な演奏には陥っていない。

交響曲第2番においてもショルティのアプローチは、例によって強靭なリズム感とメリハリの明瞭さを全面に打ち出したものであり、その鋭角的な指揮ぶりからも明らかなように、どこをとっても曖昧な箇所がなく、明瞭で光彩陸離たる音響に満たされていると言えるところだ。

したがって、同曲に、英国の詩情に満ち溢れた美しさを期待する聴き手にはいささか不満が残る演奏と言えるかもしれない。

しかし、絶対音楽としての交響曲ならでは堅牢な造型美、そして広範なダイナミックレンジを駆使したスケールの雄大さにおいては、他の英国系の指揮者による演奏においては決して味わうことができない独特の魅力を有している。

他の演奏とは異なったアプローチにより、同曲の知られざる魅力を引き出すことに成功した名演と評価してもいいのではないだろうか。

特に、一部のトゥッティの箇所において、これはロンドン・フィルの必ずしも一流とは言い難い技量にも起因しているとは思われ、いささか力づくの強引さが感じられるきらいもないわけではないが、緩徐楽章においては、ショルティなりに情感豊かに歌い抜いており、演奏全体としては十分に剛柔のバランスがとれているのではないかと考えられる。

ショルティの統率の下、必ずしも一流とは言い難いロンドン・フィルも、随所に粗さは感じさせられるが、演奏全体としては十分に健闘していると言えるところであり、持ち得る実力を存分に発揮した好パフォーマンスを発揮していると評価したい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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