2015年07月30日
ハイティンク&ロンドン響のブルックナー:交響曲第9番[SACD]
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2013年2月17&21日、ロンドン、バービカンセンターに於けるライヴ録音。
2011年にリリースされた交響曲第4番「ロマンティック」が、近年の充実ぶりを示す演奏内容との高評価を得ていたハイティンク&ロンドン交響楽団が、今度はブルックナーの交響曲第9番をレコーディング。
ハイティンクの円熟を感じさせる素晴らしい名演の登場だ。
ハイティンクは、全集マニアとして知られ、さすがにハイドンやモーツァルトの交響曲全集は録音していないが、ベートーヴェン、シューマン、ブラームス、マーラー、チャイコフスキー、ショスタコーヴィチなど、数多くの作曲家の交響曲全集のスタジオ録音を行ってきているところだ。
ブルックナーについても、ハイティンクは早くも40代前半にコンセルトヘボウ・アムステルダムと交響曲全集録音を完成させ、今日に至る豊富なディスコグラフィからも、当代有数のブルックナー指揮者としてのハイティンクの業績にはやはり目を瞠るものがある。
そのなかでも近年のハイティンクが、良好な関係にある世界有数の楽団を指揮したライヴ演奏の数々は内容的にも一際優れた出来栄えをみせているのは熱心なファンの間ではよく知られるところで、このたびのロンドン交響楽団の第9番もまたこうした流れのなかに位置づけられるものと言えるだろう。
既に、80歳を超えた大指揮者であり、近年では全集のスタジオ録音に取り組むことはなくなったが、発売されるライヴ録音は、一部を除いてさすがは大指揮者と思わせるような円熟の名演揃いであると言っても過言ではあるまい。
本盤に収められたブルックナーの交響曲第9番も、そうした列に連なる素晴らしい名演に仕上がっていると高く評価したい。
ハイティンクは、同曲をコンセルトヘボウ・アムステルダム(1965年)(1981年)とともに2度スタジオ録音を行っており、オーケストラの名演奏もあって捨てがたい魅力があるが、演奏全体の持つスケールの雄大さや後述の音質面に鑑みれば、本演奏には敵し得ないと言えるのではないだろうか。
ベートーヴェンやマーラーの交響曲の演奏では、今一つ踏み込み不足の感が否めないハイティンクではあるが、ブルックナーの交響曲の演奏では何らの不満を感じさせない。
本演奏においても、ハイティンクは例によって曲想を精緻に、そして丁寧に描き出しているが、スケールは雄渾の極み。
重厚さにおいてもいささかも不足はないが、ブラスセクションなどがいささかも無機的な音を出すことなく、常に奥行きのある音色を出しているのが素晴らしい。
これぞブルックナー演奏の理想像の具現化と言っても過言ではあるまい。
悠揚迫らぬインテンポを基調としているが、時として効果的なテンポの振幅なども織り交ぜるなど、その指揮ぶりはまさに名人芸の域に達していると言ってもいいのではないか。
ハイティンク自身によるものとしては過去最長の演奏時間を更新しているが、実演特有の有機的な音楽の流れに、持ち前のひたむきなアプローチでじっくりと神秘的で崇高なるブルックナーの世界を聴かせてくれる。
ハイティンクの確かな統率の下、ロンドン交響楽団も圧倒的な名演奏を展開しており、とりわけホルンをはじめとしたブラスセクションの優秀さには出色のものがあると言えるだろう。
いずれにしても、本演奏は、現代を代表する大指揮者の1人であるハイティンクによる円熟の名演と高く評価したい。
そして、本盤で素晴らしいのは、マルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質録音である。
音質の鮮明さに加えて、臨場感溢れる音場の広さは見事というほかはなく、あらためてSACD盤の潜在能力の高さを思い知った次第だ。
マルチチャンネルで再生すると、各楽器セクションが明瞭に分離して聴こえるのは殆ど驚異的であるとすら言えるだろう。
ハイティンクによる素晴らしい名演をSACDによる極上の高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したいと考える。
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