2015年06月22日

デュメイ&ピリスのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ「春」&「クロイツェル」


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本盤には、デュメイがピリスと組んで1997〜2002年にかけてスタジオ録音を行ったベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集のうち、爽やかな明るさやロマン的な幸福感に溢れる第5番「春」と劇的緊張感と圧倒的な迫力が充実した世界を形作る第9番「クロイツェル」という最も有名な2曲が収められている。

デュメイとピリスという息の合った名コンビが全10曲の録音に5年もの長期間を要したということは、デュメイ、そしてピリスがいかに慎重を期してベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの演奏・録音に望んだのかを窺い知ることが可能だ。

デュメイとピリスの音楽的出会いから、その後の12年にわたる2人の歩みが結実したベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ集。

ふたりが1990年代の初頭に初めて共演して意気投合した作品がベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタであったことを裏付けるような、深い味わいを湛えた演奏を繰り広げている。

ところで、常々のデュメイのヴァイオリン演奏は超個性的である。

持ち前の超絶的な技量をベースに、緩急自在のテンポ設定、思い切った強弱の変化、思い入れたっぷりの濃厚な表情づけや、時としてアッチェレランドなども駆使するなど、楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くした演奏を展開しており、その躍動感溢れるとともに伸びやかで情感豊かな表現は、即興的で自由奔放と言ってもいいくらいのものだ。

しかしながら、本演奏では、楽曲がベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタだけに、その片鱗を感じさせる箇所は散見されるものの、どちらかと言えば他の楽曲の演奏のような奔放さは影を潜めていると言えるのではないだろうか。

むしろ、演奏全体の基本的なスタンスとしては、真摯に、そして精緻に楽想を描いていくのに徹しているようにさえ感じられる。

しかしながら、スコアの音符の表層をなぞっただけの薄味な演奏にいささかも陥っておらず、各フレーズの端々にはフランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わいが満ち溢れており、このような演奏全体を支配している気品と格調の高さは、フランス人ヴァイオリニストでもあるデュメイの真骨頂であると言えるだろう。

そして、かかるセンス満点のデュメイのヴァイオリン演奏の魅力を、より一層引き立てているのがピリスによる名演奏である。

常々のピリスのピアノ演奏は、瑞々しささえ感じさせるような透明感溢れるタッチで曲想を美しく描き出していくというものであり、シューベルトやショパンなどの楽曲においてその実力を十二分に発揮しているが、本盤のベートーヴェンの演奏においては、そうした繊細な美しさにとどまらず、強靱さや重厚さも垣間見られるところであり、いい意味での剛柔バランスのとれた堂々たるピアニズムを展開していると言えるだろう。

そして、ピリスの場合は、いかなるフォルティッシモに差し掛かっても、1音1音に独特のニュアンスが込められるとともに、格調の高さをいささかも失うことがないのが素晴らしい。

この素晴らしい名コンビの演奏は、常に聴き手の心をあたたかくし、深い感動を呼び起こす。

いずれにしても、本演奏は、様々な同曲の演奏の中でも、フランス風のエスプリ漂う洒落た味わいや格調の高い美しさを湛えた素晴らしい名演と高く評価したい。

音質は、従来盤でも十分に満足できるものであったが、今般のSHM−CD化によって、デュメイのヴァイオリンの弓使いやピリスのピアノタッチがより鮮明に再現されるとともに、音場がより一層幅広くなったように思われる。

いずれにしても、デュメイ、そしてピリスによる至高の名演を、SHM−CDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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