2015年06月16日

チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル 東京ライヴ集成


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生前は原則として一切の録音を拒否し、幻の指揮者と言われていたチェリビダッケであるが、没後、相当数の録音が発売されることになり、その独特の芸風が多くのクラシック音楽ファンにも知られることになった。

チェリビダッケの演奏は、楽曲の精神的な深みを徹底して追求しようというものではなく、むしろ音というものの可能性を徹底して突き詰めたものであり、まさに音のドラマ。

チェリビダッケは、音の1つ1つを徹底して鳴らし切ることによってこそ演奏全体が成り立つとの信念の下、音楽の流れよりは1つ1つの音を徹底して鳴らし切ることに強い拘りを見せた。

もっとも、これではオペラのような長大な楽曲を演奏するのは困難であるし、レパートリーも絞らざるを得ず、そして何よりもテンポが遅くなるのも必然であった。

したがって、チェリビダッケに向いた楽曲とそうでない楽曲があると言えるところであるが、この東京公演盤に関しては、いずれもチェリビダッケならではの名演揃いであると評価したい。

アプローチとしてはEMI盤と基本的に変わりがないものの、チェリビダッケが愛した日本での公演であること、当日の聴衆の熱気、そして何よりも極上の高音質録音によって、各楽器セクションが明瞭に分離して聴こえることなどが相俟って、スローテンポであってもいささかも間延びがしない充実した音楽になっているのではないかと思われるところだ。

ブルックナーの「第5」と「第8」は、何という圧倒的な音のドラマであろうか。

チェリビダッケは、リハーサルにあたって徹底したチューニングを行ったが、これは、音に対する感覚が人一倍鋭かったということの証左である。

楽曲のいかなるフレーズであっても、オーケストラが完璧に、そして整然と鳴り切ることを重視していた。

それ故に、それを実現するためには妥協を許さない断固たる姿勢とかなりの練習時間を要したことから、チェリビダッケについていけないオーケストラが続出したことは想像するに難くない。

そして、そのようなチェリビダッケを全面的に受け入れ、チェリビダッケとしても自分の理想とする音を創出してくれるオーケストラとして、その生涯の最後に辿りついたのが、本盤の演奏を行っているミュンヘン・フィルであった。

確かに、この演奏をブルックナーの交響曲演奏の理想像と評価するには躊躇するが、いわゆる音のドラマとしては究極のものと言えるところであり、良くも悪くもチェリビダッケの指揮芸術の全てが如実にあらわれた演奏と言うことができるだろう。

いずれにしても、聴き手によって好き嫌いが明確に分かれる演奏であり、前述のように、ブルックナーらしさという意味では疑問符が付くが、少なくともEMIに録音された演奏よりは格段に優れており、筆者としては、チェリビダッケの指揮芸術の全てがあらわれた素晴らしい名演と高く評価したい。

シューマンの交響曲第4番やムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」もテンポは遅い。

例えば、組曲「展覧会の絵」について言うと、約42分もかけた演奏は他にも皆無であろうし、シューマンの交響曲第4番についてもきわめてゆったりとしたテンポをとっている。

しかしながら、本盤の両曲の演奏には、こうしたテンポの遅さをものともしない、圧倒的な音のドラマが構築されている。

とりわけ、組曲「展覧会の絵」は、ラヴェルの光彩陸離たる華麗なオーケストレーションが魅力の楽曲であるが、これをチェリビダッケ以上に完璧に音化した例は他にはないのではなかろうか。

ブラームスの交響曲第4番やR.シュトラウスの交響詩「死と変容」についても同様のことが言えるだろう。

その他の小品も、チェリビダッケならではのゆったりとしたテンポによる密度の濃い名演と評価したい。

いずれにしても、これらの演奏を演奏時間が遅いとして切り捨てることは容易であるが、聴き終えた後の充足感においては、過去のいかなる名演にも決して引けを取っていないと考えられるところである。

チェリビダッケの徹底した拘りと厳格な統率の下、まさに完全無欠の演奏を行ったミュンヘン・フィルによる圧倒的な名演奏に対しても大きな拍手を送りたい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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