2015年05月31日

小澤&シカゴ響のR=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」、他


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近年では健康を害して指揮台に立つのも難儀をしている小澤であるが、小澤の得意のレパートリーは何かと言われれば、何と言ってもフランス音楽、そしてこれに次ぐのがロシア音楽ということになるのではないだろうか。

ロシア音楽について言えば、チャイコフスキーの後期3大交響曲やバレエ音楽、プロコフィエフの交響曲やバレエ音楽、そしてストラヴィンスキーのバレエ音楽など、極めて水準の高い名演を成し遂げていることからしても、小澤がいかにロシア音楽を深く愛するとともに得意としているのかがわかるというものだ。

R=コルサコフの最高傑作でもある交響組曲「シェエラザード」も、そうした小澤が最も得意としたレパートリーの1つであり、これまでのところ3度にわたって録音を行っている。

最初のものが本盤に収められたシカゴ交響楽団との演奏(1969年)、2回目のものがボストン交響楽団との演奏(1977年)、3回目のものがウィーン・フィルとの演奏(1993年)である。

いずれ劣らぬ名演であり、とりわけウィーン・フィルとの演奏については、オーケストラの魅力ある美しい音色も相俟って、一般的な評価も高いし、演奏全体の安定性などを総合的に考慮すれば、ボストン交響楽団の演奏が、小澤による同曲の代表的名演と評価することもできよう。

それらに対し、シカゴ交響楽団との演奏は、まだ30歳代半ば、小澤のEMIレーベルへのデビュー当時の録音であり、若き小澤が世界に羽ばたこうとしていた熱き時代のものである。

1963年のラヴィニア音楽祭での共演以来、頻繁に共演を繰り返していたシカゴ交響楽団というこの上ないパートナーを得て、若き小澤がこの名門オケを大胆にリードし、この上なく新鮮でみずみずしい、颯爽とした「シェエラザード」に仕上がっている。

この当時の小澤の演奏は、豊かな音楽性を生かしつつ、軽快で躍動感溢れるアプローチに加えて、エネルギッシュで力強い生命力に満ち溢れていた。

トゥッティに向けて畳み掛けていくような気迫と力強さは圧倒的な迫力を誇っており、切れば血が噴き出てくるような熱い情感に満ち溢れている。

同曲の随所で聴かれるロシア風の抒情的な旋律の歌い方もいささかも重々しくなることはなく、瑞々しさを感じさせてくれるのが素晴らしい。

同曲には様々な指揮者による多種多彩な名演が目白押しであるが、小澤の演奏は、得意のフランス音楽に接する時のような洒落た味わいと繊細とも言うべき緻密さと言えるのではないかと考えられる。

とりわけロシア系の指揮者に多いと言えるが、ロシア風の民族色を全面に打ち出したある種のアクの強さが売りの演奏も多いが、小澤の演奏はその対極に位置しているとも言える。

ロシア系の指揮者の演奏がボルシチであるとすれば、小澤の演奏はあっさりとした味噌汁。

しかしながら、その味噌汁は、あっさりとはしているものの、入っている具材は実に多種多彩。

その多種多彩さはボルシチにはいささかも劣っていない。

それこそが、小澤による本演奏の特色であり、最大の美質と言えるだろう。

要は、演奏の表層は洗練されたものであるが、どこをとっても洒落た味わいに満ち満ちた独特のニュアンスが込められるとともに、聴かせどころのツボを心得た演出巧者ぶりにも際立ったものがあると言えるだろう。

こうした若き小澤の統率の下、卓越した技量を発揮したシカゴ交響楽団による名演奏も素晴らしい。

とりわけ管楽器の技量とパワーは桁外れであり、巧みなオーケストレーションが施された同曲だけに、本名演への貢献度は非常に大きいと考える。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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