2015年07月05日
テンシュテット&ロンドン・フィルのブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(1989年ライヴ)
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テンシュテットと言えば、近年発掘された様々な壮絶な名演によって、ますますその人気が高まっているが、いわゆるマーラー指揮者のイメージが強いと言えるのではないだろうか。
確かに、これまでに発売されたマーラーの交響曲の圧倒的な超名演の数々を考えてみれば、それは致し方がないことと言えるのかもしれない。
しかしながら、テンシュテットが西側に亡命した頃は、先ずブルックナーで評価されていた指揮者であったことを忘れてはなるまい。
事実テンシュテットは、ブルックナーの交響曲の録音をかなりの点数を遺しており、いずれも注目に値する演奏ばかりである。
すべての交響曲を録音しているわけではないが、第3番、第4番、第7番、第8番については、自らのレパートリーとしてコンサートでもたびたび採り上げていたと言えるところだ。
そうした4曲の交響曲の中でも、テンシュテットが最も採り上げた交響曲は第4番であったと言える。
最初及び2度目の録音はベルリン・フィルとのスタジオ録音及びライヴ録音(1981年)、3度目の録音は、ロンドン・フィルとの来日時のライヴ録音(1984年)、そして4度目の録音が本盤に収められたロンドン・フィルとのライヴ録音(1989年)となっている。
これから新たなライヴ録音が発掘されない限りにおいては、交響曲第4番は、テンシュテットが最も録音したブルックナーの交響曲と言えるであろう。
テンシュテットによる同曲へのアプローチは、朝比奈やヴァントなどによって1990年代にほぼ確立された、いわゆるインテンポを基調とするものではない。
むしろ、テンシュテットのブルックナー解釈は実にはっきりしていて、ブルックナーを後期ロマン派の作曲家の1人として割り切ったものである。
それ故、テンポの振幅や思い切った強弱の変化を施すなどドラマティックな要素にも事欠かないところであり、テンシュテットが得意としたマーラーの交響曲におけるアプローチに比較的近いものと言える。
したがって、こうしたテンシュテットによるアプローチは、交響曲第7番や第8番においては若干そぐわないような気がしないでもないが、第4番の場合は、相性がいいのではないかと思われるところだ。
4つの演奏のいずれも名演であるが、やはり演奏の持つ根源的な迫力という意味においては、第1に本盤(1989年盤)を掲げるべきであろう。
本盤の演奏におけるテンシュテットのアプローチも、比較的ゆったりとした曲想の進行の中に、前述のようなドラマティックな要素(とりわけ第3楽章)を織り交ぜたものとなっている。
他盤よりテンポは若干遅めで、力みがまったく感じられず、どこまでも自然体ながら終楽章に向かってジワジワと高揚するテンシュテットらしい名演。
テンシュテットの指揮は、生命力にあふれ、美しい旋律の歌いまわしも陶酔的で、特に躍動感あふれるスケルツォ、重厚なオケの響きが印象的なフィナーレはベーム、カラヤン、ブロムシュテット等の名盤にも決して劣らない素晴らしい名演と言えるだろう。
もっとも、スケールが小さくなることなど薬にしたくもなく、ブルックナーの本質をいささかも逸脱することがないというのは、テンシュテットの同曲への深い理解と愛着の賜物と言えるところだ。
オーケストラは、必ずしも一流とは言い難いロンドン・フィルではあるが、テンシュテットの圧倒的な統率の下、ベルリン・フィルにも比肩し得るような見事な名演奏を展開しているのが素晴らしい。
艶やかな弦、輝かしい金管、テンシュテットのブルックナーの微細な要求まで描き尽くす演奏力が見事である。
いずれにしても、本盤の演奏は、テンシュテットならではの圧倒的な名演と高く評価したいと考える。
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