2015年06月01日

ノイマン&チェコ・フィルのベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」(1976年ライヴ)


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チェコの名指揮者であったノイマンの得意のレパートリーは、ドヴォルザークやスメタナなどのチェコの作曲家による楽曲や、ボヘミア地方で生まれたマーラー(チェコ出身の指揮者はそれを誇りとし、クーベリックや近年のマーツァルなど、チェコ出身の指揮者には、マーラーをレパートリーとした者が多い)の交響曲であった(ノイマンはドヴォルザークとマーラーについては交響曲全集を遺した)。

ノイマンはそれ以外の楽曲、意外に少ないとは言え、とりわけベートーヴェンの楽曲についてはなかなかの名演奏を遺しており、最晩年に録音された序曲集はノイマンによる遺言とも言うべき至高の名演であったことは記憶に新しいところだ。

本盤に収められたベートーヴェンの交響曲第9番は、そうしたノイマンの得意としたレパートリーの1つと言えるところであり、ベートーヴェンにも優れた解釈を示してきたノイマンの数少ない録音の1つとしても貴重である。

ノイマンは同曲を1989年に民主化の喜びに沸く「市民フォーラム」支援のためにプラハで開かれたライヴ録音も遺しているが、本盤に収められた演奏は、それから13年前の1976年に東京文化会館で行われた来日公演の記録で、非常に完成度が高く充実した演奏である。

改めて言うまでもないが、ノイマンによる本演奏は、聴き手を驚かすような奇を衒った解釈を施しているわけではない。

楽想を精緻に、そして丁寧に描き出して行くというオーソドックスなアプローチに徹していると言えるところであり、それはあたかもノイマンの温厚篤実な人柄をあらわしているかのようであるとも言える。

もちろん、ノイマンの演奏が穏健一辺倒のものではないという点についても指摘しておかなければならないところであり、ベートーヴェンの楽曲に特有の強靭にして力強い迫力においてもいささかも不足はない。

それでいて、無機的で力づくの強引な演奏など薬にしたくもなく、常に奥行きのある音が鳴っており、ベートーヴェンの楽曲を単なる威圧の対象として演奏するという愚には陥っていない。

豊かな抒情に満ち溢れた情感豊かな表現も随所に聴かれるところであり、いい意味での剛柔バランスのとれた演奏に仕上がっているとも言えるところだ。

ノイマンの解釈は極めて端正・精緻であり、一点の曇りも感じさせず、しかも悠然としていて、表面的効果を狙わず、どの部分をとっても安定感があり、堅固で気品がある。

これは、あらゆる「第9」解釈の原点、というより「第9」の原像そのものと言って良く、基本的にノイマン&チェコ・フィル演奏の基本特徴である端正で透明感のある響きはそのままに、ノイマンは高揚感を抑えて端正な演奏を聴かせる。

基本的に落ち着いた堂々たる旧スタイルのベートーヴェン演奏で、すっきりとしたいつものノイマンの基本線は変らないが、やはりライヴだけあってかなり燃えているのがよくわかる。

第1楽章は堂々とした力感と重量感を表し、第2楽章はきめ細かく、軽やかなリズムの端正な表現である。

第3楽章も穏やかな淡々とした表現が美しい流動感を作り、終楽章では合唱が熱気にあふれ、自ずと音楽を盛り上げている。

響きに厚みと勢いがあり、独唱・合唱もすぐれていて、ライヴならではの迫力にも満ちている。

聴き手によっては、ベートーヴェンの「第9」だけに、よりドラマティックな表現を期待する人も多いとは思うが、聴けば聴くほどに味わい深さが滲み出てくる、いわばいぶし銀の魅力を有する本演奏は、ノイマンならではの大人の指揮芸術の粋とも言えるところであり、筆者としてはノイマン最盛期の名演の1つと高く評価したいと考える。

当時、一流の弦セクション及びブラスセクションを擁していたチェコ・フィルの演奏も秀逸であり、本演奏を名演たらしめるのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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