2022年08月28日
プレトニョフ&ロシア・ナショナル管のチャイコフスキー:マンフレッド交響曲
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プレトニョフ&ロシア・ナショナル管弦楽団によるチャイコフスキーの交響曲チクルスは、マンフレッド交響曲で第7弾。
かつては不人気だったこの作品も、現在ではチャイコフスキーらしさ満載の魅力作として広く受け入れられており、特にオケ好きの評価は高いものがあるだけに、新録音は歓迎されるところである。
これによって、死後補筆の第7番を除けば、チャイコフスキーの自筆で完成された交響曲のすべてがすべて出揃い、これでこのコンビによる2度目の全集が完結したのは慶賀に堪えない。
本盤の演奏を聴いて感じられるのは、そしてそれはこれまでの他の交響曲の演奏においても共通しているとも言えるが、プレトニョフのチャイコフスキーへの深い崇敬の念である。
2度にわたって交響曲全集を録音するという所為もさることながら、演奏におけるアプローチが、他の楽曲とは次に述べるように大きく異なっているからである。
プレトニョフは、数年前に、ロシア・ナショナル管弦楽団とともにベートーヴェンの交響曲全集を録音しており、それは聴き手を驚かすような奇抜とも言える超個性的な演奏を繰り広げていた。
それだけに、賛否両論が渦巻いていたが、それに対して、今般のチャイコフスキーの交響曲全集においては、ある意味では正統派の演奏。
物議を醸したベートーヴェン全集の場合とは大きく異なり、チャイコフスキーの音楽では、真正面から音楽に向かい合った堂々たる円熟の演奏を展開してきたプレトニョフ&ロシア・ナショナル管弦楽団。
1990年の創設からすでに20年以上、同コンビによる新全集は、旧ソ連の崩壊やロシアのオーケストラの乱立など、多くの混乱を乗り越えてきた彼らの実績を代表する力作として、高度な水準を維持しながら着々と進行してきた。
演奏の総体としては、いささかも奇を衒うことがないオーソドックスな演奏を展開していると言えるところである。
もちろん、オーソドックスとは言っても、そこはプレトニョフ。
個性が皆無というわけではない。
本盤に収められたマンフレッド交響曲においても、テンポの振幅を効果的に活用したり、ここぞという時にはアッチェレランドを駆使するなど、プレトニョフならではのスパイスが随所に効いていると言えるだろう。
にもかかわらず、演奏全体としては、あざとさをいささかも感じさせず、前述のように、オーソドックスな装いとなっているのは、プレトニョフがチャイコフスキーの交響曲を深く理解するとともに、心底からの畏敬の念を有しているからに他ならないのはないかとも考えられるところだ。
プレトニョフにとっては、本盤のマンフレッド交響曲の演奏は、約15年ぶりの録音ということになるが、この間のプレトニョフの指揮芸術の円熟を感じさせるものであり、音楽の構えの大きさ、楽曲への追求度、細部への目配りなど、どの点をとっても、本演奏は数段優れた名演に仕上がっていると言えるだろう。
それにしても、ペンタトーンレーベルによる本チクルスの音質は例によって、高音、重低音ともよく捉らえており、実に優秀で素晴らしい。
プレトニョフの精緻にして緻密さを基調とするアプローチを音化するのには、極めて理想的なものと言えるのではないだろうか。
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