2015年06月12日

セル&クリーヴランド管のモーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」、第40番、第41番「ジュピター」


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セルが遺した録音を俯瞰してみると、やはり古典派の演奏がことに素晴らしく、本盤に収められたモーツァルトも凡百のアルバムとは一線を画す、セルの面目躍如とした好演と言えよう。

セルの芸術が、モーツァルトと実によくフィットしており、無駄のない歯切れのよい演奏で、ウィーン風ではないかもしれないが、オケのバランスが素晴らしい。

そして、実に引き締まった筋肉質の演奏であるとともに、インスピレーションに導かれたクリスタルのような名演だ。

喜びと悲しみが表裏一体となった演奏と言えるところであり、まさに、セル&クリーヴランド管弦楽団の全盛期の演奏の素晴らしさを存分に味わうことができると言えるだろう。

セルは、先輩格である同じハンガリー出身の指揮者であるライナーや、ほぼ同世代でハンガリー出身のオーマンディなどとともに、自らのオーケストラを徹底して鍛え抜いた。

セルの徹底した薫陶もあって、就任時には二流の楽団でしかなかったクリーヴランド管弦楽団もめきめきとその技量を上げ、ついにはすべての楽器セクションがあたかも1つの楽器のように奏でると言われるほどの鉄壁のアンサンブルを構築するまでに至った。

「セルの楽器」との呼称があながち言い過ぎではないような完全無欠の演奏の数々を成し遂げていたところであり、本盤の演奏においてもそれは健在である。

モーツァルトの交響曲第35番、第40番、第41番の名演としては、優美で情感豊かなワルター&コロンビア交響楽団による演奏(第40番についてはウィーン・フィルとの演奏)や、それにシンフォニックな重厚さを付加させたベーム&ベルリン・フィルによる演奏が名高いと言えるが、セルによる本演奏はそれらの演奏とは大きく性格を異にしていると言えるだろう。

3曲ともすみずみまでコントロールされた表現であり、現代的とも言える鋭い感覚がみなぎっている。

きりりと引き締まったアンサンブルがとても魅力的で、演奏の即物性において、演奏全体の造型の堅牢さにおいてはいささかも引けをとるものではない。

テンポといい表情といい、よく整っているその中にセルの情感がテンポの動きやダイナミックな変化の中に浮かび上がってくる。

「ハフナー」交響曲の冒頭、生きのいい音楽がはじまった瞬間から、巨匠セルとクリーヴランド管弦楽団が奏でる演奏に引き込まれる。

特に、ト短調シンフォニーの共感に満ちた歌と悲愴美は音楽を豊かに色どっており、説得力が強い。

いつものセルと比較してテンポの緩急の変化が大きく、時におやっと思えるほど際立った動きをみせ、メリハリのある演奏で聴きごたえがある。

圧巻は、本CD最後に収められた「ジュピター」シンフォニーの演奏で、速いテンポで率直にあっさりと表現していて、情緒というよりは感覚的で明快な表現を志向しているようだ。

両端楽章がリズミックで威風堂々としていて、フレージングや間の取り方のひとつひとつに名人芸とも言うべき味わいがあって魅了される。

全4楽章が厳しく引き締められているが、第2楽章ではほのぼのとした温かさも感じさせる。

とりわけ、第3楽章から終楽章にかけての演奏は素晴らしく、聴いていてまさに天上にいたる心地で、天からの贈り物のようなモーツァルトの音楽を堪能させてくれる。

そして、各フレーズにおける細やかな表情づけも、各旋律の端々からは汲めども尽きぬ豊かな情感が湧き出してきており、決して無慈悲で冷徹な演奏には陥っていない点に留意しておく必要がある。

いささかオーケストラの機能美が全面に出た演奏とも言えなくもないところであり、演奏の味わい深さという点では、特に第40番については、クリーヴランド管弦楽団との来日時のライヴ録音に一歩譲るが、演奏の完成度という意味においては申し分がないレベルに達しており、本盤の演奏を全盛期のこのコンビならではの名演と評価するのにいささかも躊躇するものではない。

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classicalmusic at 22:44コメント(0)トラックバック(0)モーツァルト | セル 

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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