2015年06月05日

ジルベルシュテイン&アバドのラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、第3番


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ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番及び第3番を収録したCDは非常に多く出回っているが、近年の録音ではジルベルシュテインがアバドの指揮でベルリン・フィルと共演したアルバムが溌剌として爽やか、一陣の薫風が駆け抜けていったかのような演奏は、最近の筆者の嗜好に合っている。

ピアノを弾いているジルベルシュテインの、妙なけれんがなく、メロディーラインを素直に歌い上げているところが好ましく、アバド指揮ベルリン・フィルのオケとのバランスもよい。

ジルベルシュテインの演奏を聴いていつも感じるのは、ラフマニノフの曲に霊感を与えるのは弦楽器の音だということである。

ピアノは、弦楽器によって作られた霊的な音の熱狂・興奮をより高める役割を担っている。

筆者は、ジルベルシュテインのピアノに印象を受けないと言うつもりはなく、むしろ逆で、彼女は、弦楽器によって作り出された音響の世界をピアノ1台で突き破ろうとし、ピアノの限界に挑むのである。

すみずみまで感興を行き渡らせ、その力強いピアノのタッチから感じられるエネルギーは、聴き手に大きな印象を与える物凄い音楽である。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番及び第3番はメジャーな作品だけにとても思い入れのこもった演奏が多く、そのため、ピアノやオケのどちらかが前面に出すぎてしまうことが多かったりするのであるが、この演奏はピアノとオケのハーモニーやピアノの問いかけに対するオーケストラの受け答えなどバランスが絶妙である。

おそらく綿密に計算された演奏であるためであろうが、適度な緊張感や綺麗な音の響きと相俟ってとても美しい演奏になっている。

この演奏のバックを務めるアバドは、私見であるが、これまでの様々な名指揮者の中でも、最高の協奏曲指揮者と言えるのではなかろうか。

ベルリン・フィルの芸術監督に就任する前には、ロンドン交響楽団とともに圧倒的な名演奏を成し遂げていた気鋭の指揮者であったアバド。

そのアバドは、ベルリン・フィルの芸術監督就任後、借りてきた猫のような大人しい演奏に終始するようになってしまった。

カラヤン時代に、力の限り豪演を繰り広げてきたベルリン・フィルも、前任者と正反対のアバドの民主的な手法には好感を覚えたであろうが、演奏については、大半の奏者が各楽器セクションのバランスを重視するアバドのやり方に戸惑いと欲求不満を感じたのではないか。

それでも協奏曲の演奏に限ってみれば、ベルリン・フィルの芸術監督就任以前と寸分も変わらぬ名演を成し遂げていたと言える。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番におけるアルゲリッチとの競演(1994年)、そして、レコード・アカデミー賞を受賞したブラームスのピアノ協奏曲第2番におけるブレンデルとの競演(1991年)など、それぞれの各楽曲におけるトップの座を争う名演の指揮者は、このアバドなのである。

本盤に収められたロシア出身のピアニストであるリーリャ・ジルベルシュテインと組んで録音を行ったラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、第3番についても、こうした名演に系譜に連なるものとして高く評価したいと考える。

協奏曲の演奏に際してのアバドの基本的アプローチは、ソリストの演奏の引き立て役に徹するというものであり、本演奏においても御多分にも漏れないが、オーケストラのみの演奏箇所においては、アバドならでは歌謡性豊かな情感に満ち溢れており、格調の高さも相俟った美しさは、抗し難い魅力に満ち溢れている。

ここぞという時の力感溢れる演奏は、同時期のアバドによる交響曲の演奏には聴くことができないような生命力に満ち溢れており、これぞ協奏曲演奏の理想像の具現化と評しても過言ではあるまい。

ラフマニノフのピアノ協奏曲に特有のロシア風のメランコリックな抒情を強調した演奏にはなっておらず、両曲にロシア風の民族色豊かな味わいを求める聴き手にはいささか物足りなさを感じさせるきらいもないわけではないが、ジルベルシュテインのピアノ演奏の素晴らしさ、両曲の持つ根源的な美しさを見事に描出し得たといういわゆる音楽の完成度という意味においては、まさに非の打ちどころのない素晴らしい名演に仕上がっていると高く評価したいと考える。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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