2015年06月03日
プレヴィン&ロンドン響のチャイコフスキー:3大バレエハイライツ
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本盤には、プレヴィンが当時の手兵であるロンドン交響楽団とともに1970年代にスタジオ録音したチャイコフスキーの3大バレエ音楽からのハイライトが収められている。
プレヴィンは元来ロシア音楽を得意としているだけあって、こうした作品を指揮すると卓越した手腕を発揮する。
決してバレエ風の表現ではなく、演奏会風のスタイルなのだが、リズムが抜群に弾んでいるので、実に面白く聴くことが出来る。
その語り口の巧さといい、音楽的な洗練度といい、いまだに魅力を失っておらず、文句のつけようがない見事な名演と言えると思う。
非常に完成度の高い出来ばえで、ほどよい距離を保ちながら、全体を的確に把握しており、危うさがない。
プレヴィンは、クラシック音楽の指揮者としてもきわめて有能ではあるが、それ以外のジャンルの多種多様な音楽も手掛ける万能型のミュージシャンと言える。
映画音楽で鍛えたブレヴィンだけに、そのストーリー・テラー的な巧さと絵画的な表現力にかけては、抜群の威力を発揮する。
したがって、本演奏においてもそのアプローチは明快そのものであり、楽曲を難しく解釈して峻厳なアプローチを行うなどということとは全く無縁であり、楽曲をいかにわかりやすく、そして親しみやすく聴き手に伝えることができるのかに腐心しているように思われる。
したがって、ベートーヴェンなどのように、音楽の内容の精神的な深みへの追究が求められる楽曲においては、いささか浅薄な演奏との誹りは免れないと思うが、起承転結がはっきりとした標題音楽的な楽曲では、俄然その実力を発揮することになる。
本盤に収められたチャイコフスキーの3大バレエハイライツは、そうしたプレヴィンの資質に見事に合致する楽曲と言えるところであり、加えて若さ故の力強い生命力も相俟って、素晴らしい名演に仕上がったと言っても過言ではあるまい。
プレヴィンが自家薬籠中のものとしているチャイコフスキーのバレエ音楽だけに、巧みな棒さばきで各場面を的確に描き分けながら、作品の幻想的な持ち味をあますところなく表出している。
全体にややテンポを遅めにとり、チャイコフスキー独特の抒情的な旋律をたっぷりと歌わせながら、極めてパノラミックな表現で、どの曲も表情豊かにまとめている。
聴かせどころのツボを心得た演出巧者ぶりは心憎いばかりであり、プレヴィンの豊かな音楽性が本演奏では大いにプラスに働いている。
情緒的なものに過度にのめり込むことなく、かといって、非情につぱねるようなこともなく、知情意のバランスが無理なくとれていて、どの角度からみても、プレヴィンならではの、安定した性格の演奏と言えよう。
決してとりわけ優美であるとか、ファンタジー的であるという性格ではないが、個々のことが整然と把握されており、全体のバランスがよく、洗練されたスマートなプロポーションで、プレヴィンの力量のほどを物語るような安定した出来ばえを誇る内容だ。
ロンドン交響楽団もプレヴィンが首席指揮者時代の演奏で、呼吸もぴったりの相性の良さと言える。
クラシック音楽入門者が、チェイコフスキーのバレエ音楽を初めて聴くに際して、最も安心して推薦できる演奏と言えるところであり、本演奏を聴いて、嫌いになる聴き手など、まずはいないのではないだろうか。
いずれにしても、プレヴィンによる本演奏は、チャイコフスキーのバレエ音楽には、ロジェストヴェンスキー、ゲルギエフなどによるロシア風の民族色溢れる名演や、アンセルメやデュトワによる洗練された色彩美を誇る名演などがあまた存在しているが、安定した気持ちでチャイコフスキーのバレエ音楽を魅力を味わうことができるという意味においては、第一に掲げるべき名演と評価したい。
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