2015年08月01日
チョン・ミュンフン&ウィーン・フィルのドヴォルザーク:弦楽セレナード、管楽セレナード
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本盤にはチョン・ミュンフンがウィーン・フィルを指揮して演奏したドヴォルザークの弦楽セレナード及び管楽セレナード(2001年)が収められている。
ここでチョン・ミョンフンは、ウィーン・フィルという最高の楽器を用いて奏でた至芸を披露している。
チェコの民謡をほとんど感じさせず、ドヴォルザークの作品としては異色の2作品であるが、民俗的な表情に寄り掛からず、どっしりと遅めのテンポでオーケストラをたっぷりと歌わせた純音楽的な表現が新鮮な感動を呼ぶ。
何事にも全力投球で取り組み、完全燃焼するチョン・ミュンフンは、ウィーン・フィルとともに既にドヴォルザークの交響曲第3番及び第7番の録音(1995年)及び交響曲第6番及び第8番の録音(1999年)を行っており、見事な成果をもたらした。
本盤は同コンビによるドヴォルザーク作品集第3弾ということになるが、今回も美しい旋律を持つこの2作品を強い説得力をもって語りかけ、情感豊かな歌に満ちた名演に仕上がっている。
最近では、その芸風に円熟味が加わると同時にやや元気がなくなり、いささか影が薄い存在になりつつあるチョン・ミュンフンであるが、1980年代後半から2000年代前半にかけてのチョン・ミュンフンの演奏は実に魅力的であった。
本演奏でもそれが顕著にあらわれているが、この当時のチョン・ミュンフンの演奏に共通していたのは、ひたすら曲想を前に進めていこうとする気迫と、切れば血が噴き出てくるような生命力溢れる力強さであったと言える。
それ故に、テンポは若干速めであると言えるが、それでいていわゆる上滑りをしたり、薄味の演奏に陥ることはいささかもなく、どこをとっても豊かな情感に満ち溢れているのが素晴らしいと言える。
ドヴォルザークの弦楽セレナードは比較的ゆっくりとしたテンポで演奏されることが多いが、チョン・ミュンフンのテンポは軽快で、フレージングの仕方もさすがと言わざるを得ない。
また、チョン・ミュンフンは必ずしもインテンポに固執しているわけではない。
一聴すると、音楽がやや速めのテンポでごく自然に滔々と流れていくように聴こえるところであるが、随所にテンポの微妙な変化を加えたり、はたまた格調の高さをいささかも失うことなく個性的な表情づけを付加するなど、実に内容の濃い演奏を行っているのがわかるところである。
そして、本演奏をさらに魅力的なものにしているのは、ウィーン・フィルによる美しさの極みとも言うべき名演奏であると言えるところであり、演奏全体に適度の潤いとあたたかみを付加しているのを忘れてはならない。
チョン・ミュンフンの音楽性豊かな指揮の下、極上の美演を展開したウィーン・フィルに対しても大きな拍手を送りたいと考える。
特に弦楽セレナードでは、さすがウィーン・フィルと思わせる高音部の音のきらめき、粒の均一さを感じることができる。
中でも第1楽章の最後では、テンポが動きやすく、しかもトリルが連続する難しい場面の音の揃え方は、見事の一言に尽きる。
ウィーン・フィルの美質を見事に生かしきったチョン・ミュンフンによる演奏は、数々の名盤にも決して引けをとらない名演と言えるだろう。
本演奏の素晴らしい出来具合などに鑑みれば、チョン・ミュンフンには是非ともウィーン・フィルとともに、ドヴォルザークの交響曲全集を完成させて欲しいと思っている聴き手は筆者だけではあるまい。
録音は、従来盤でも十分に満足できる音質ではあるが、チョン・ミュンフンによる素晴らしい名演でもあり、今後はSHM−CD化、そして可能であればシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化を図るなど、更なる高音質化を大いに望んでおきたいと考える。
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