2015年06月10日

カヤヌスのシベリウス:交響曲第1番、ポホヨラの娘、タピオラ


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本盤には、フィンランドの歴史的な名指揮者ロベルト・カヤヌスのシベリウス録音が収められているが、カヤヌスこそは、シベリウス作品を全世界に広めたパイオニア的存在である。

いま改めて聴いてみると、いまさらのようにカヤヌスの偉大な芸術に感嘆させられてしまう。

カヤヌスはシベリウスより9歳年長であったが、シベリウスの親友であり、生涯を通じてシベリウスの作品の紹介につとめ、作曲もよくし、シベリウスがもっとも信頼する指揮者として活躍した。

しかもカヤヌスは、室内楽への創作に勤しむ若きシベリウスに管弦楽曲への作曲を奨励した人物でもある。

当時はヨーロッパの片田舎であったフィンランドから、シベリウスの作品が発信され、やがて国際的に知られることになったのは、ひとえにカヤヌスの功績である。

シベリウスは、1930年代、「誰を指揮者に推薦するか」という英コロムビアからの問い合わせに、即座に「カヤヌスを」と推薦している。

コロムビア社に異存のあるわけもなく、カヤヌスはシベリウスの7つある交響曲のうちの「第1」「第2」「第3」「第5」の4作品を、ロンドン交響楽団とともに録音している。

「第3」「第5」を録音した翌年の1933年にカヤヌスは亡くなっているので、もう少し長生きしていれば、ほかの曲も入れてくれていただろう、と思うと残念だ。

ここに集められた録音は、作曲者直伝とも考えられる、もっとも正統的な解釈の演奏であり、骨の太い演奏で、ただの歴史的な記録に終わらない、本物の演奏芸術である。

シベリウス在世中の空気を生々しく肌で感じた音楽であるとともに、同時代の精神を映した鏡である。

カヤヌスは、シベリウスの書いた何気ないフレーズや複層的な和音の積み重ねに命を吹き込む特別の才能を持っていたのだ。

現在のシベリウスの演奏は、すべてがカヤヌスの芸術の後裔といってよく、改めてシベリウスの音楽から多くを発見することになろう。

これらの演奏は、いずれも凄いほどの意欲と共感に貫かれている。

交響曲第1番は冒頭から、もう情念が迫ってくるような激しさをもち、楽員が凄まじい熱意をもって演奏していることがわかる。

そのひたむきな意欲が音楽的な推進力となって示されるさまは、爽快としかいいようがなく、第1楽章の再現部など、燃えたぎる灼熱の音楽である。

第2楽章もスケールの大きさとデュナーミクの自然さがあり、一句一節が意味深く感じられ、第3楽章のロマンの濃密なこと、独自のアゴーギクをもつことも特筆しておきたい。

クレッシェンドやディミヌエンドがテンポの緩急と見事に連動しているのも、カヤヌスの魅力である。

第1番の終楽章でもわかることだが、フレージングとアーティキュレーションが明晰で、すべてが作品を生かし切っている。

当時のオーケストラを、よくぞここまでドライヴしたともいえるが、そこにカヤヌスの不退転の決意が感じられる。

2曲の管弦楽曲もそれぞれが名演で、《ポホヨラの娘》の多様な表情と張り詰めた力感も素晴らしいの一語に尽きる。

さらに《タピオラ》の磨かれた弦の美しさ、構造的な理解の深さ、強い意力をもった表情は、当時としてはかなり前衛的な作品の適切な表現と感じられる。

これらの演奏を聴くと、シベリウスは何と理想的な指揮者を得たのだろうか、と思う。

いや、それよりも驚嘆するのは、カヤヌスという巨大な存在が、1930年代に、いま聴いても新鮮な音楽をつくっていたという、それこそ驚くべき事実である。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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