2015年08月22日

内田光子&クリーヴランド管のモーツァルト:ピアノ協奏曲第18番、第19番


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



内田光子の円熟を感じさせる素晴らしい名演の登場だ。

内田光子と言えば、今や我が国にとどまらず、世界でも指折りの女流ピアニストと言えるが、今から30年ほど前は、ジェフリー・テイト&イギリス室内管弦楽団をバックとしてスタジオ録音を行ったモーツァルトの一連のピアノ協奏曲の演奏で知られる存在であった。

これら一連の録音は現在でも十分に通用するクオリティの高い名演であるが、内田光子はそうした当時の高評価に安住することなく研鑽に努め、シューベルトのピアノ・ソナタ集やベートーヴェンの後期のピアノ・ソナタ集などの数々の歴史的な超名演を経て、現在の確固たる地位を築き上げてきたと言えるだろう。

そうした現代最高の女流ピアニストの1人となった内田光子が、数年前からクリーヴランド管弦楽団の弾き振りによって開始したチクルスが、まさに満を持して再録音に挑むことになるモーツァルトのピアノ協奏曲集である。

既に、第1弾(第20番&第27番)、第2弾(第23番&第24番)、第3弾(第9番&第21番)が登場しており、本盤は新チクルスの第4弾(第18番&第19番)ということになる。

第1弾、第2弾、第3弾ともに至高の超名演であったが、本盤の演奏もそれらに優るとも劣らない凄い超名演だ。

かつてのジェフリー・テイトと組んで演奏した旧盤とは比較にならないような高みに達しているとも言えるだろう。

それにしても、モーツァルトの傷つきやすい繊細な抒情を、これほどまでに意味深く演奏した例は、これまでの様々なピアニストの演奏にあったであろうか。

繊細な抒情に加えて、ここぞという時の力強さにもいささかの不足はないが、それでいて、時折見られる効果的な間の取り方は、殆ど名人芸の域に達しており、これは、内田光子としても、前録音から26年を経て漸く到達し得た至高・至純の境地と言えるだろう。

モーツァルトの楽曲は、ピアノ協奏曲に限らないが、一聴すると典雅で美しい旋律に時として憂いに満ちた寂しげなフレーズが盛り込まれているが、そうした箇所における表現が内田光子の場合は絶妙なのである。

各旋律における表情付けの意味深さは鬼気迫るものがあり、諸説はあると思うが、モーツァルトのピアノ協奏曲の本質のベールが内田光子によってこそはじめて脱がれたとも言ってもいいのではないか。

これら両曲の演奏の内面から浮かび上がってくるモーツァルト渾身の魂の響きは、あまりにも繊細にして優美であり、涙なしでは聴けないほど感動的と評しても過言ではあるまい。

モーツァルトのピアノ協奏曲に旋律の美しさ、聴きやすさ、親しみやすさのみを求める聴き手には全くお薦めできない演奏とも言えるが、モーツァルトのピアノ協奏曲を何度も繰り返し聴いてきた聴き手には、これらの楽曲の本質をあらためて認識させてくれる演奏であり、その意味では玄人向けの演奏とも言えるだろう。

本演奏は内田光子の弾き振りであるが、クリーヴランド管弦楽団も、内田光子の繊細なピアノに符合した、実に内容豊かでコクのある演奏をしているのが素晴らしい。

テイト盤はとにかくピアノとオーケストラが流れるように一体化した完璧な美しさと粒立ちの良いピアノの美しい音が際立っていたが、今回のクリーヴランド盤は各パートの演奏に個性と持ち味がしっかりと前に出ていて、自由闊達なピアノとの対話が面白い。

弦の各声部のディテールもしっかり聴かせ音楽がより鮮やかになり、またライヴなのでカデンツァ部分のさらに彫りの深い表現が絶品で、弱音と無音部分の息遣いが素晴らしい。

弾き振りのライヴ録音なので仕方がないのだが、当然内田の集中も分散されてるわけで、以前の流れるような美しさや速いパッセージでの丁寧なタッチが失われたのが少々残念だが、弾き振りならではのリズミックな縦の線を強調し各パートの生き生きとした表現がよりモーツァルトらしく思われた。

いずれにしても、本盤の演奏は、モーツァルトのピアノ協奏曲演奏の真の理想像の具現化と言っても過言ではない、至高の超名演と高く評価したい。

ピアノとの相性抜群のSHM−CDによる鮮明な高音質も、本名演に華を添えることになっており、高く評価すべきものと考える。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 22:53コメント(0)トラックバック(0)モーツァルト | 内田 光子 

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ