2015年06月08日
フルトヴェングラーのフランク:交響曲(ウィーン・フィル、1945年ライヴ)/モーツァルト:交響曲第39番(ベルリン・フィル、1942年ライヴ)
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フルトヴェングラーによるフランクの交響曲の名演と言えば、衆目の一致するところ1953年の英デッカ盤であると考えるが、本盤のグランドスラムによる見事なLP復刻に接して、この1945年盤も1953年盤に決して引けを取らない名演であることを思い知った。
「フランスのブラームス」とも評されたフランクの交響曲を、偉大なブラームス解釈者であり、最もドイツ的音楽性を具現したフルトヴェングラーが指揮したこの録音は、フランクの作品の中に流れるドイツ的要素を強く前面に押し出した名演奏となっている。
第1楽章の第1主題に向けてのハチャメチャなアッチェレランドはいかにもやり過ぎだとは思うが、テンポ設定の思い切った変化やダイナミックレンジの幅広さ、金管楽器の最強奏や低弦によるドスの利いた重低音のド迫力、そして情感の豊かさなどを織り交ぜつつ、自由奔放と言ってもいいくらい夢中になって荒れ狂う。
それでいて全体としての造型をいささかも損なうことがなく、スケールの雄大さを失わないのは、フルトヴェングラーだけがなし得た天才的な至芸と言えるだろう。
いちばん良いのは第2楽章で、あっさりした表情づけが、かえって寂しさを感じさせるからである。
曲の最後に美しい中間部の主題がロ長調で再現されるあたりの余情は、その最たるものであり、何でもなく奏されるので、いっそう心を打つ。
それにしても、ナチスドイツの敗色濃厚な中で、敵国であるフランス音楽(フランクはベルギー人であるが)を堂々と演奏するフルトヴェングラーの反骨精神には、ほとほと感心させられる。
他方、モーツァルトの第39番も名演で、一口に言えば、スケールの大きい、ベルリン風のモーツァルトだ。
さすがのフルトヴェングラーも、モーツァルトではフランクのように荒れ狂ったりはしない。
この点は、モーツァルトの本質をしっかりと捉えていたことの証左であろう。
オーケストラの鳴りっぷりは重々しく、暗く、厳しく、しかし弦はよく歌い、この指揮者の音楽哲学がベートーヴェンを原点としていたことを如実に証明するようなモーツァルト演奏ではある。
しかし、「それが何だ!」と、胸を張って主張できるような感動がこのCDには刻まれており、音楽とは何と複雑で、奥行きの深い芸術であることであろうか!
それにしても、この荘重たるインテンポから漂ってくる深みは、何と表現すればいいのだろうか。
まさに、天才だけに可能な至高・至純の境地と言えよう。
第1楽章の出は猛烈なエネルギーで、ここには驚くほどの歌と、まるでベートーヴェンのような響きがあり、導入部最後にはものものしいリタルダンドがかけられる。
主部もカロリー満点、強靭にリズムが刻まれ、前進力もあり、コーダの弦は熾烈とさえ言えるところであり、そして最後はアッチェレランド気味にすごい高まりを見せる。
第2楽章もピアニッシモの深刻な感情移入、フォルティッシモの心からの叫び、というように表現の幅が広い。
メヌエットにおけるフルトヴェングラー式のアインザッツ、フィナーレ最後の高揚感など、いかにもこの指揮者らしい味わいである。
グランドスラムによる復刻も最高で、この当時のものとは言えないくらい鮮明なものであり、既発売CDと、今回のグランドスラム盤の音質の差は大きいと言える。
重厚なオーケストラの低音も見事に捉えられているし、最弱音の繊細は響きもかなり鮮明に捉えられている。
それぐらい、この英HMV盤のLPから復刻された本CDの音質は素晴らしく、改めて、フルトヴェングラーの芸術の真の魅力にのめり込んだ次第である。
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