2015年06月23日

追悼 ロリン・マゼール


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ロリン・マゼールは、まさしく音楽の才人であった。

全身これ音楽というか、簡単なものから複雑なものにいたるまで、ありとあらゆる音符が彼の体内に入り、完全に消化されている状態というか、とにかく音楽のことならいくところ可ならざるはなかった。

バレンボイムも同様だ。

マゼールといい、バレンボイムといい、この種の才人は日本には存在しない。

クラシック音楽の伝統の長い西欧だけに生まれるタイプで、単なる小器用な職人とはまるで違うのである。

彼らがリハーサルをしたり、ピアノを弾いたり、楽譜を読んだりしている現場を見たら、おそらく人間業とは思えないだろう。

イタリアの教会の門外不出の秘曲を、ただ1度聴いただけで暗譜してしまったモーツァルトに近い才能が、彼らにはあるような気がする。

もっともマゼールはあまりにも才能がありすぎるため、他の音楽家がまったく信用できなかったという噂もまことしやかに伝えられている。

名門ウィーン・フィルでさえ、マゼールにとっては子供同然で、4拍子のやさしい曲でさえ、きちんと4つに振ってから音を出させていたという。

それでは、彼らの音楽が感動的かというと、必ずしもそうではなかった。マゼールはとくにそうだ。

マゼールは、いつの時代においても先端に位置するような「売れっ子」だったので、当然のことながらレコードの数も多い。

1950年代に始まった彼の録音歴は、60年代、70年代、80年代、90年代、そして2000年代へと、旺盛に持続されてきている。

その量的な意味でのムラのようなものは、ほとんどといっていいほど、ない。

しかしながら、マゼールの夥しい数のディスコグラフィを、その内容面からみると、ずいぶんムラのようなものがあることに気がつく。

すぐれた演奏、注目すべきものが、ほとんど初期の録音に偏ってしまっているのだ。

同曲異演盤をいくつか比較しても、それらは例外なく初期のもののほうがすぐれている。しかもかなりの差をつけて…。

特に、マゼールが得意としたチャイコフスキーの交響曲に関しては、後年のクリーヴランド管弦楽団との録音よりも、キャリア初期のウィーン・フィルとの録音の方が断然聴き応えがある。

ここには独特の表現で物議を醸すこともあった、曲想の核心へと大胆に踏み込むキャリア初期のマゼールの特徴が深く刻まれている。

演奏というひとつの再現行為に烈しく燃焼している若き日のマゼールの姿がここにある。

音楽と真正面から対峙することを望むリスナーには必聴の録音であるとさえ言えるであろう。

ところで、マゼールにとっての指揮者人生最大の挫折は、ポストカラヤン争いの本命を自負していたベルリン・フィルの後継者に選ばれなかったことであった。

運命はマゼールに味方をしなかった。

芸術監督の選に漏れたマゼールは、衝撃のあまりベルリン・フィルとの決別を決意。

ドイツ国内での指揮さえも当初は拒否したが、その後数年で、バイエルン放送交響楽団の音楽監督に就任。

さらに、1999年になって漸くベルリン・フィルの指揮台にも復帰したが、その後強烈に印象に残る演奏・録音を筆者は記憶していない。

こうしたことは、マゼールという指揮者を考えるうえでの興味深い点であり、同時に、彼の悲劇的な点でもあったのだ。

改めて、心より哀悼の念を表したい。

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classicalmusic at 00:37コメント(2)トラックバック(0)マゼール  

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コメント一覧

1. Posted by マイスターフォーク   2014年07月29日 11:10
マゼール氏は自分の欲しいテンポを速やかに楽員に伝える能力は抜群でした。

テンポ80と82の違いと意味合いも納得出来るように伝える力がとても優れてたと思います。


2. Posted by 和田   2014年07月29日 11:59
仰せの通りだと思います。
それと、どんなに音響的に入り組んだスコアでも、マゼールの手にかかると、実に明瞭なかたちで聴こえてくるから不思議でした。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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