2015年06月23日

モントゥーについて


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ピエール・モントゥー(1875-1964)は、往年の名指揮者の中で、わが国を訪れた数少ない巨匠の1人である。

モントゥーは、1963年4月、大阪フェスティヴァルの3回の演奏会でロンドン交響楽団を指揮した。

これは幸運と言うべきだが、演奏会が大阪だけで、多くの音楽愛好家を口惜しがらせたという。

ただ筆者は1度だけモントゥーの指揮をテレビで見たことがある。

もう20年以上も前だが、モントゥーはシカゴ交響楽団を指揮してベートーヴェンの交響曲(第1番か第8番)を演奏した。

それはテレビ映画だったが、長いバトンを振って悠然と指揮するモントゥーの姿からは、風雪に耐えた大樹を思わせる毅然とした態度と、温和で暖かい人間性が滲み出ていて、今も懐かしく思い出される。

その印象はレコードで聴くモントゥーの演奏の魅力を裏づけるものであった。

交響曲であれ、バレエ音楽であれ、歌劇であれ、あるいは協奏曲や歌曲のパートナーとしてであれ、モントゥーは、作品と聴き手の仲介者の立場に徹し、決して自己顕示的でない。

しかし、それはモントゥーの解釈が没個性的であることを意味せず、むしろ節度を保った演奏の中で彼の個性は輝きを放っているのである。

モントゥーは1942年にアメリカ合衆国の国籍をとったが、元来はパリに生まれたユダヤ系のフランス人で、音楽教育をパリ音楽院で受けている。

従って一般にはフランスの音楽家と考えられているが、多くの同僚と違って、モントゥーの演奏から洒落た感覚とか粋なニュアンスが第一に感じられることはない。

モントゥーの演奏は洗練されているが、本質的に健康で豊かな感情に満ち、しかもそれに押し流されない「良識」(フランス人の最も好きな言葉だが)をそなえている。

モントゥーの意志の強さとエネルギーは、頼まれたら否と言えない性質、衰退の極にあるオーケストラの再建、新しいオーケストラの訓練、若い指揮者の育成……に遺憾なく発揮されている。

ストラヴィンスキーの《春の祭典》の初演で騒ぎにもめげず最後まで演奏を続けた闘志にもそれは感じられる。

モントゥーの業績の中でも特筆すべきは、1919年からの5年間、クーセヴィツキーの前任者としてボストン響を再建した立役者であることだ。

ドイツ人ムックの後任であったから、ムック派の関係者の一部から猛烈な妨害工作があり、楽員を45名も入れ替えねばならないなど苦労を背負ったが、辛抱強くやり遂げた。

続くクーセヴィツキー時代、ボストン響から、その功労を無視され続けたモントゥーだったが、1951年、ミュンシュの情愛のこもった招聘に応え、再びボストン響の指揮台に立った。

モントゥーとボストン響の美しい再縁を取り持ったミュンシュに感謝したい。

このように見て来ると、同じような道を歩んだミュンシュと比較するが、演奏に示した解釈はかなり対照的である。

しかし、筆者にはその根底に2人を結ぶ共通のパイプがあるように思えてならない。

それはフランス人の持っている人生を肯定的に考える性格、明晰な知性、鋭い直感であり、ゴール人以来の男性的な率直さ、暖かさである。

さらに付け加えるとすれば、2人の演奏が「老い」を感じさせなかったことである。

特にモントゥーは亡くなる直前まで演奏会と録音を続けたから、それはいっそうはっきりする。

「巨匠」と呼ばれる指揮者も多かれ少なかれ「老い」を感じさせるものだが、モントゥーにはその気配が全くなかった。

モントゥーの演奏は常に構成がしっかりしていてテンポは弛緩することなく、リズムの歯切れが良いこともあって常に若々しく、爽やかであった。

この活力が何処から来たものか筆者にはわからないが、このような芸術家の存在は私たちを幸福にしてくれるのではないだろうか。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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