2015年07月10日

ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルのチャイコフスキー:交響曲第5番(1978年ウィーン・ライヴ)


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筆者は、ウィーンに行くと、必ずウィーン国立歌劇場と、ムジークフェライン・ザールに行くことにしている。

ムジークフェライン・ザールは、コンサート専用のホールで、「黄金大ホール」といわれているように、ホールの内装は金ピカで、古き良き時代のオーストリアが、いかに音楽に対して贅をつくしていたかがよくわかる。

このホールは、音響効果の優れていることでも有名で、ホール全体が、あたかも楽器そのもののようである。

このロシアの巨匠ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団によるディスクは、1978年の6月、ウィーン芸術週間に、このホールで行われた演奏会のライヴ録音である。

このコンビによるチャイコフスキーの交響曲第5番の録音は、いままでに何枚も出ているが、今回のは、それらのものを遥かに凌ぐ名演奏で、この曲を完全に手中に収めた、悠然たる構えの表現である。

ロシア人の体臭を強く感じさせる素晴らしい演奏で、明暗の度合いをくっきりとつけながら、丹念に彫琢していくこの巨匠の棒さばきは、あたかも名匠の振るうノミのように正確で、しかも生き生きとしている。

この演奏の緊張した凝集力と迫力は凄まじく、しかも感性の豊かさ、精妙をきわめたアンサンブルの見事さは比類がない。

もちろん、一分の隙もないきびしさをもっているが、それが作品のシリアスな側面を否応なく表現している。

ムラヴィンスキーの解釈は常に有無を言わさぬ説得力をもっており、聴衆に媚びるところは皆無である。

ムラヴィンスキーは個性的な表情を作っているが、それはまさに老巧ともいうべきものであり、一見そっけないようだが、音楽には常に血が通っている。

そうした彼のロシア流のチャイコフスキーは、カラヤンに代表される西欧の聴かせ上手な指揮者の解釈とはまったく対照的といってよい。

デュナーミクも精緻そのもので、曲の冒頭から短い動機のひとつひとつにも絶妙な表情が与えられ、それらが強靭な織物のように組みあげられている。

第2楽章ではやや速めと感じられるテンポをとり、息の長いフレーズを情熱的に高揚させるのは、やはり聴きものである。

第3楽章はいくぶん恣意的だが、その洗練された味わいは独特であり、フィナーレも流動感が強い。

そこに鮮やかな立体感があるのも、この演奏の大きな特色で、チャイコフスキーが記した音符のすべてに意味があり、存在理由があることを、ムラヴィンスキーの演奏からは、誰もが理解することが可能である。

しかも、あらゆる部分に瑞々しい創意が息づき、それが新鮮さの原動力といえるが、それは音量に依存しているのではなく、内面の凄絶な緊張感から生み出されたものである。

そのうえ、巨匠的風格が曲のすみずみまでに滲み出ており、ライヴ独特のきりりと引き締まった緊張感が何とも素晴らしく、激しく心を揺さぶられる。

オーケストラも、艶のある弦楽器と底力のある金管楽器が特に見事で、これこそロシアの音といってよく、レニングラードに特有の西欧的洗練を実感させる表現が、チャイコフスキーの折衷的作風を描いている。

そのどこをとってもまったく隙がなく、そこにソヴィエト体制の影響をみることも可能かもしれないが、その鉄の規律はここでは壮大な記念碑を打ち建てる方向に作用しており、こうした演奏はもう現れることはないだろう。

録音はムジークフェラインの響きとしてはやや乾いた印象を与えるとはいえ、一連の旧ソヴィエト録音よりはるかに条件は整っており、ムラヴィンスキーによる同曲の録音といえば、まずこの演奏を聴く必要があろう。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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