2015年08月07日

サヴァリッシュ&バイエルン国立歌劇場のワーグナー:楽劇「ニーベルングの指環」


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サヴァリッシュの《リング》は、この『EMI/Wagner:THE GREAT OPERAS』に収録され、値下げ再発となっているので、本BOXを入手する方が、他のワーグナーのオペラの名演も聴くことができ、お買い得と言える。

とりわけ《リング》ビギナーの方でチョイスに迷われてるなら、是非、購入検討リストの最上位に加えて、よりビッグ・ネームの指揮者を擁する他盤とも同列に比較して頂きたいのが本盤であり、リブレットこそ付随しないが、買って失敗のない内容、と保証出来得る。

海外Amazonで、単なる盤コレクターでなく、劇場に通い慣れ目と耳が肥えた猛者たちのレビューを読んで、「種々、複数の《リング》を所有しているが、何だかんだ云って、聴きやすくて楽しめる、また、実際プレイヤーにかける機会が多いのが案外このサヴァリッシュ=バイエルン盤なんじゃないか」みたいな意見を目にしては、「やっぱり、みんな考えること、感じてることは変わらないな」と思ったりもする。

手許にある《リング》にはいずれも長短思い入れがあり、オケ/合唱、歌手陣、音質、使用言語、(映像なら)演出…と各面のケチをつけ始めればキリがなくなるが、「ツィクルス全体と捉えたときの、失点、瑕疵の少なさ故の満足度の意外な高さ」が、このCD版《サヴァリッシュ・リング》の魅力のように感じている。

このレーンホフ演出のサヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場の《リング》はNHK-BSで放送され、DVDになっている。

演出、カメラワークなどの映像製作面における失望感は、優れた歌手、指揮者らによる演奏の印象も薄くしてしまっていた。

最近のオペラは舞台をみるよりも音だけを聴いたほうがいい場合も多いが、15年近く前のこのCDを購入して聴いてまさにそう思った。

DVDの音はわからないが、CDでの音はBS放送のときよりもオーケストラが前面に出ており、リマスタリングされたため音が美しく、バイエルン国立歌劇場管弦楽団の澄み切った音色の美しさが堪能できる。

全体的に叙情的なサヴァリッシュの指揮もCDで聴いたほうが引き締まっており、このコンビによるオルフェオのブルックナーの交響曲の名演を彷彿とさせる。

目の前で展開するレーンホフの演出に疑問を感じ、反感を覚える理性と自身の内なる「荒ぶるドイツ性」との間に相当の葛藤を抱えながら、さらに、あろうことか、ベルリンでは『壁崩壊』がまさに進行中という非常事態の最中、「一時代の終焉」を劇場にいる全員が意識する中で振っていたことが「災い転じて福となった」のかどうかは知らない。

しかし、ここでのサヴァリッシュの指揮は、ひたすら高燃焼で畳み掛け「聴き手のアドレナリンの血中放出を過度に促進させる」類いの音作りではないにせよ、祝祭の華やぎの中で謙虚にスコア自体に語らせ、実に自然な呼吸で豪華歌手陣を存分に歌わせており、「老カペルマイスター」らしい貫禄、威厳ある落ち着きを強く感じさせる。

筆者としては、年々丸くなっていった感のある後期のサヴァリッシュのスタイルの特段の贔屓筋でもないが、ここでは、手練れではあっても露骨に武骨/タカ派的な方向には極力走るまいと自重する、良識派戦後西ドイツ人=サヴァリッシュらしい抑制の効いたリリカルなアプローチに、往年の奥義もバイロイトの実地で身に付けた経験豊富な正統派ワーグナー指揮者であればこそのスケールの大きさと本能的に抗い難い「暴走への欲望」を時折覗かせてくれたりもして、彼としては、1950-60年代のバイロイトやイタリアでのライヴ各種名演と並んで後世に遺る出色の名盤だと思う。

さらに1990年頃の名歌手を総動員した歌手陣は最高で、ヴィントガッセンを上回るジークフリートであるコロ、「黄昏」で邪悪なハーゲンを歌うサルミネンは特に印象深い。

おそらく歌手陣では、ショルティ、ベームの時代以降で最高であり、映像を見ないで聴けばデジタル時代でこれを超えるものがなく、もっと評価されるべきディスクであろう。

筆者にとっては、《リング》を難しく考えたくないとき、敢えて気軽に流したいときの最右翼盤となっている。

なお拍手は一部カットされており、オーディエンスノイズから推測するとゲネプロや本番の上演から編集されているようだ。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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