2015年07月01日
パッパーノ&サンタ・チェチーリア国立アカデミー管のレスピーギ:ローマ三部作+夕暮れ
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指揮者アントニオ・パッパーノ&サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の2014年来日記念盤。
パッパーノ指揮するサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の演奏はムーティ&フィラデルフィア管弦楽団の同曲のような分厚いサウンドと白熱のセッションとは異なった、イタリアのオーケストラらしい、いくらか線は細めですっきりした明るい音響に満たされている。
だが、勿論迫力にも不足しない充分に余裕のあるテクニックとボリュームも持ち合わせている。
弦はどこまでも明るく伸びやか、木管楽器の微妙なニュアンス、バランス感覚に優れた金管の咆哮、期待をはるかに凌駕する演奏内容だ。
このオケはチョン・ミュンフンとの各種チクルスで有名になってきたが、実に奔放で綺麗な音を出す楽団だと感心した。
それでいて解釈が写実的で色彩感が著しく濃くて鮮烈で、特に『松』の描写力は素晴らしく前例のない程の密度感だ。
やはりイタリア人の血によって指揮されるイタリア・オケならではと言うことで、大陸的なエレガントさや気品のようなものよりどことなく猥雑な気配も漂うネーティブ・タッチのレスピーギ。
シンフォニー・オーケストラの絢爛たるサウンドが最大限に発揮される管弦楽作品の傑作を、重厚なサウンドで名高い名コンビの演奏と言えよう。
またイタリア系指揮者のお家芸カンタービレではパッパーノも引けを取らない流麗な歌心が随所で発揮されているが、ローマの風物詩を一大音像絵巻で綴ったこの作品を彼はセンチメンタリズムではなく、冷静に計算されたダイナミズムの振幅を巧みにコントロールして曲を構成する手腕と、音響効果による鮮烈な情景描写は流石だ。
例えば「アッピア街道の松」のクライマックスでは放射状に拡散させるような輝かしい音響によって次第に近付いてくるローマ軍の凱旋を表現しているし、『祭』のフィナーレではナヴォーナ広場で繰り広げられる主顕祭前夜の、矢継ぎ早に入れ替わる登場人物の姿態と騒然とした雰囲気の映像的描写に成功している。
この音源は2枚組のSACDでもリリースされているが、通常盤では『松』と『祭』の間に、レスピーギがシェリーの詩のイタリア語訳をメゾ・ソプラノと弦楽合奏のために作曲した『夕暮れ』が挿入されている。
ここでもパッパーノの鋭い感性と歌物に強いサンタ・チェチーリアの巧妙さが発揮されているが、ソロを歌うクリスティン・ライスのイタリア語がいまひとつ曖昧なのが惜しまれる。
このCDの特徴のひとつは音質に優れていることで、レギュラー・フォーマット盤でもこれだけ臨場感に溢れた、しかもオーケストラの分離状態の良さを再現できることを示したEMIの意地が感じられる。
『ローマ三部作』のような大編成のオーケストラを駆使して鳴り響く大音響が求められる曲では、音量だけでなく各楽器間の独立した音色が聴き分けられることが重要なポイントだ。
録音は2007年にローマの新アウディトリウムで行われたが、2,2秒の豊かな残響も決して邪魔にならない鮮明な音質が保たれている。
このホールが建つパルコ・デッラ・ムージカはレンツォ・ピアノのプロジェクトで実現した音楽ホールや劇場施設の集合体だが、サンタ・チェチーリアはヴァチカンにある旧アウディトリウムからこちらに本拠地を移して活動を続けている。
まもなくリリースされる予定の同メンバーによるロッシーニ序曲集にも期待したい。
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