2015年09月07日
ウト・ウーギ コレクション
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2014年に70歳を迎えたウト・ウーギのRCA音源を2枚ずつ9巻にまとめてボックス化したセットで、ソニー・ミュージック・エンターテイメント・イタリーの企画になる。
ウーギは3歳年上のサルヴァトーレ・アッカルドと共に、コレッリ以来の伝統芸術を継承する典型的なヴァイオリニストだ。
ウーギの演奏の特徴は楽器が持つ総ての特性を引き出しながら、ムラのない美音を縦横に駆使するカンタービレにある。
あらゆるフレーズに歌が息づいているがそれが耽美的にならず、古臭さを感じさせないのはウーギがそれぞれの作曲家の様式感を決して崩さないからだろう。
最初の2枚、バッハの『無伴奏ソナタとパルティータ』(1991年録音)でのコンセプトも同様で、彼は対位法の各声部をくまなく感知させるというより、むしろそれが織り成す和声から醸し出される音響と旋律の美しさに魅力がある。
演奏に構築的な緊張感は求められないが、純粋にヴァイオリンという楽器に適った奏法への追究が可能にした演奏で、先だってリリースされたモーツァルトのソナタ集と並んでヴァイオリン音楽の入門者にもお薦めしたい質の高い演奏集だ。
ウーギは幼い頃から英才教育を受けることができた恵まれた環境に育った。
10歳の時パリに留学してエネスコが亡くなるまでの2年間彼に師事しているので、グリュミオーやメニューインとも同門下とも言えるが、その後に形成されたウーギのスタイルからはイタリアの音楽から切り離すことができない血統のようなものさえ感じられる。
ウーギの磨きぬかれた光沢のある滑らかな弦の響きと屈託のないロマンティシズムから導き出される仄かな官能性には比類がない。
ちなみにウーギの使用楽器は1701年製のストラディヴァリウス(ヴァン・ホーテン=クロイツァー)及び1744年製のグァルネリ・デル・ジェズ(カリプロ=ヘンネル=ロゼ)の2挺で、前者はベートーヴェンがヴァイオリン・ソナタ第9番を献呈したクロイツェルの、そして後者はグリュミオーの所有だった名器だ。
幸いこのページにボックス裏面の写真が掲載されているので収録曲目は一覧できるが、参考までに主な協演者を記しておくと、ヴァイオリン協奏曲に関してはベートーヴェン(1981年録音)とブラームス(83年)はいずれもヴォルフガング・サヴァリッシュ、メンデルスゾーンとブルッフ(82年)がジョルジュ・プレートル、チャイコフスキー(80年)がクルト・ザンデルリンク指揮で、ここまでのオーケストラは総てロンドン交響楽団。
次にドヴォルザーク(90年)はレナード・スラットキン、フィルハーモニア管弦楽団、シューマン(93年)がサヴァリッシュ、バイエルン放送交響楽団とのコンビになる。
その他ヴィヴァルディ、ヴィオッティ、モーツァルト、パガニーニはウーギ自身の弾き振りでサンタ・チェチーリア室内管弦楽団とそのピックアップ・メンバーがサポートしている。
一方ベートーヴェンとシューマンのヴァイオリン・ソナタ集はサヴァリッシュ、小品集ではスラットキン、ピエロ・マージ及びレオナルド・バルテッローニがそれぞれピアノ伴奏を担当している。
尚最後の1枚はウーギが昨年2013年に法王庁で小編成のオーケストラ、イ・フィラルモニチ・ディ・ローマを弾き振りしたヴァイオリン用のスタンダード・ナンバーになり、最近のウーギの演奏活動を知る上で興味深い。
CD2枚ずつが収納されたジュエル・ケース9巻の集合体であるため、外側のボックス・サイズは13X14,5X10cmとCDの枚数のわりにはかなり大きめにできている。
各巻に曲目と録音データが掲載されたリーフレットのみが挿入されていてライナー・ノーツは付いていない。
音質はいずれも極めて良好。
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