2015年07月07日
ジュリーニのヴェルディ:レクイエム、聖歌四篇
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本盤の演奏内容については、既にレビューを投稿済みだが、当該盤はHQCD化によっても、大音量の際に音が歪むということで、特に、『レクイエム』ではそうした欠点が著しく、「怒りの日」でオケと合唱の怒濤の場面ではダイナミックレンジを若干割ってしまっていたのが残念であった。
それに対し、ジュリーニの生誕100周年にあやかって買い直したOriginal recording remastered盤は、リマスタリングの効果は明らかで、大音響でも歪みのない鮮烈な音質が蘇っているのが嬉しい。
セッション録音としてはジュリーニ第1回目の『レクイエム』だが、彼は既に1960年に同じフィルハーモニア管弦楽団を振ったこの曲のライヴで賞賛を得ていて、同管弦楽団とは更に1964年の映像も残されているので、ジュリーニの同曲に賭けた情熱のほどが窺われる。
このCDの音源は1963年及び64年のもので、当時の実力派4人のソリストを従えた演奏はその演奏の水準の高さと音響の生々しさでグラン・プリ・デュ・ディスクやエディソン・プライスを受賞している。
特に「怒りの日」総奏部分の爆発的な音量と最後の審判を体現するような激情的な表現は、ジュリーニが行ったあらゆるセッションの中でも最もラテン的な情熱を発散させたもので、勿論ここでは彼の創造した音響効果だけではなく、一方で緻密に計算された弛むことのない緊張感とそれを維持する凄まじい集中力が聴きどころだ。
ソロ歌手のキャスティングでは、この曲を歌うのに最も相応しいと思われる実力重視の抜擢が功を奏している。
それは4人の歌唱力に限ったことではなく、重唱部分では和声の微妙なモジュレーションの連続があり、正確な音程の維持と移行という高度なアンサンブルのテクニックが要求されるが、その意味でもこのメンバーは万全だったと言えるだろう。
シュヴァルツコップは1952年のデ・サーバタ盤でもその驚異的な歌唱を聴かせてくれたが、ここではやや翳りが出てきた声質を巧みな表現力でカバーして、よりドラマティックな名唱を残すことになった。
クリスタ・ルートヴィヒとのオクターヴのユニゾンで、しかもア・カペラで始まる「アニュス・デイ」の天上的な美しさや、最後のコーラス「リベラ・メ」に入る前の「レクイエム・エテルナム」の神々しさは唯一無二のものだ。
ヴェルディの『レクイエム』はミラノ出身の文豪アレッサンドロ・マンゾーニ追悼のために作曲されたもので、現在では宗教曲として実際に教会で演奏されることはそれほど多くない。
それはこの作品が如何にもヴェルディらしい劇場空間に相応しい華麗なオーケストレーションの音響と共に、ベルカントの泣き節的な曲想を持った声楽部分があたかも1曲のオペラのように展開するからで、それだけにオペラ劇場の演奏者によるセッションも少なくない。
このジュリーニの旧盤は古いデ・サーバタ&ミラノ・スカラ座盤と並んで個人的に最も気に入っている演奏で、その理由はオーケストラが厳格に統制されているにも拘らず、外側に向かって放出される解放的なエネルギーに満ちていて、異例のカタルシスを体験できるからだ。
フィルハーモニア管弦楽団はロンドン時代のジュリーニが最も高く評価していたオーケストラで、この演奏にも彼らの信頼関係が良く表れている。
このCDには同じくヴェルディの『聖歌四篇』が1962年の録音で同メンバーとジャネット・ベイカーのメゾ・ソプラノでカップリングされている。
フィルハーモニア合唱団も流石にコーラス王国イギリスの合唱団だけあって、その表現力と機動性でも卓越している。
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