2015年07月13日

スヴャトスラフ・リヒテル ソロ・レコーディングス


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スヴャトスラフ・リヒテルこそはまさしく巨星であった。

豪快なピアニズムと本物のデリカシーを持ったリヒテルは真の音楽家であったし、変に指揮などに色気を出さなかったところも賢明だった。

このセットで改めてその凄さに圧倒された。

この大ピアニストの演奏は「上手い」とか感じる前に「素晴らしい音楽」だと思わせるものがある。

数々の「伝説」による虚像もあるかも知れないが、そのような雑音を振り払って虚心に聴けば、その凄さはまっすぐ心に飛び込んでくる。

リヒテルはそのキャリアをライヴ演奏に賭けたピアニストだったこともあり、正式なセッションはそれほど多くなく、この33枚のCDセットでもかなりの割合がライヴ・レコーディングで占められている。

それでもさすがに録音技術で鎬を削っていたかつてのヨーロッパの御三家だけあって、いずれも概ね鮮明で良好な音質が再現されているのは幸いだ。

内容はフィリップスの『ザ・オーソライズド・レコーディングス』、デッカの『ザ・マスター』『ハイドン・ソナタ集』そしてドイツ・グラモフォンのリヒテルの総てのアルバムからピアノ・ソロのための作品をピックアップしたもので、協奏曲や連弾または他の楽器とのアンサンブル、あるいは歌曲の伴奏などは含まれていない。

初出の音源はひとつもないが、この3社のレーベルのCDの中にはリミテッド・エディションなどの理由で既に入手しにくいものや、プレミアム価格で取引されているものもあるので、今回のユニヴァーサル・イタリーによる集大成廉価盤化の企画は歓迎したい。

リヒテルは1人の作曲家の作品を系統的に網羅することや、売れ筋の曲目を弾くことになんら興味を示さなかったために、このセットには入っていないバッハの『平均律』全曲を例外にして、同一曲種の全曲録音は殆んど皆無に近い。

ライヴを重視したのは演奏の一回性への尊重と、採り直しによる集中力の散漫や技術的な編集による一貫性の欠如を嫌ったからで、ここにもリヒテルの芸術家としての確固たるポリシーが表れている。

しかしそのレパートリーは意外に広く、円熟期に入ってからも常に新しい曲目を開拓していたために彼のコンサートのプログラムはバラエティーに富んだものだった。

またこれまでに彼の演奏をリリースしたレーベルの数とそのメディアの量はプライベート的なものも含めると、全く収拾がつかなくなるほど氾濫している。

それは彼の演奏会には本人が望むか否かに拘らず、必ずと言っていいほど録音機材が持ち込まれていたからだ。

勿論ここに含まれないチャイコフスキーの小品集やグリーグの『抒情小曲集』などにもリヒテルがその名を馳せた超絶技巧とは対照的なリリカルな感性が聴き逃せないが、巨匠リヒテルを象徴するようなピアノの独奏曲はこの33枚に集約されていると言っても良いだろう。

新しいリマスタリングの表示はないので、これまで以上の音質の向上は期待していなかったが、例えばこの中では最も古い1956年のシューマン作品集(CD25)では、モノラル録音によるセッションではあるが、極めて良好な音質が得られている。

それに反して1958年に行われたブルガリアでのソフィア・リサイタル(CD33)は、客席の雑音とは別に、マスター・テープの劣化と思われるノイズが全体に聞こえる。

いずれにしても鑑賞にはそれほど煩わしさがないことも付け加えておく。

ライナー・ノーツは33ページで曲目一覧の他に英、伊語によるコメントと録音データが掲載されている。

データに関してはやや混乱をきたしていて正確さを欠いているが、リヒテルの場合膨大な数に上るライヴ音源に関してはどのレーベルにも起きていることで大目に見る必要がある。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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